double standard

平成仮面ライダーへの思い入れを語ります。現在は更新停滞中。

普通のおもしろさが、ついに 〜『仮面ライダードライブ』に寄せる期待

無事、人に頼んでおいた第二話も見られたし、HDDデコーダーも復活したし、楽しく『ドライブ』見ております。
ていうか!『仮面ライダードライブ』おもしろいな!!!
それも、尖ったところのないおもしろさ。それがすごいな、と思っております。

不思議なんですよ。実を言えば、何かが特別ぐっと来ているわけではないんです。
たとえば、キャラの特徴も、それほど強調はされていないんですよね。歴代のように、バーンとしょっぱなから視聴者をぶっ飛ばすようなことをしていない。
また、ストーリーの方も、ロイミュードは何か秘密を持っていそうだけど、それほどややこしいことにはならなそうだし。各話も、まあまだ4話だけですが、すっきりイイ話くらいで、見たことがないものが始まるぞ!みたいな感じはない。
仮面ライダーと敵の設定も、十分魅力的だけど、目を瞠るようなところはありません。「車に乗らない仮面ライダー」は一般的にはトピックだけど、「スーパーマシンに乗るヒーロー」はむしろ王道路線ですからね。

ことほどさよーに、わりと特筆すべきところはないのですが。でも『ドライブ』おもしろい!
素直なエンターテイメントとして、完成度が高い。完成度のおもしろさが『ドライブ』の最大の特徴になり得るのではないか、そしてそれは平成ライダーにとっても大きなトピックになるのではないか、とただいまとても期待しています。

どういうことかと申しますと。たとえば、前番組の『鎧武』は、「あえて新しいことに挑戦するおもしろさ」でした。これは、平成ライダーシリーズが始まった当初の路線を引き継いだものです。
しかしこのおもしろさは、挑戦があるがゆえにバランスが悪くなりやすく、そこで視聴者がふるいおとされるという欠点も持っていました。
『ドライブ』はこの反対です。表現としては新しいことをしていますが、作りとしてはオーソドックスなものを堅実に積み上げる。それは、飛躍はないかもしれませんが、万遍なく視聴者に満足を行き届かせられる洗練されたおもしろさです。

しかし、しかしです。平成ライダーはずっとこの後者の路線を願いながらも実施できていなかったのです。*1

尖ったところを減らしてエンタメとしての出来に意識を傾けた先達としては、二期に入って登場した『W』『ウィザード』とありますが、『W』はやっぱり漫画的であり、そこで少しだけ視聴者層が限られました。『ウィザード』は穏やかな作風を求めたがあまりに薄味に過ぎた面があります。
しかしこの『ドライブ』は。登場人物に特徴はつけられていますが、それほど強調された描き方ではありません。設定も、そりゃ悪の怪人VS正義の味方、ですが、戯画化されすぎえおらず、やっぱりすんなり見ることが出来ます。

『ドライブ』はドラマとして完成度が高いんですよ。それは、平成ライダー初期によく言われた、人間描写の豊かさという意味でのドラマチックとも違う。
ゴールデンの時間帯に、お茶の間で見られるような、一般的な意味のドラマです。作りの問題として。
いやこれって、すごいことだとわたしは思うよ。
だって、かなりの世代に届かせることが出来るもん。
漫画的なのが悪いとは決して言うつもりはないけれど、やっぱり特撮って実写だから。実写のおもしろさを取り込みきるって方向もやって欲しくあったんですよね。それがたぶんいま、『ドライブ』で実現するのを見ることが出来るのではないか。『ウィザード』で接近した「普通さ」をさらに強められるのではないか*2

そう、「普通さ」。『ドライブ』は普通だ。進之介が仮面ライダー足りうる理由はまだ語られていないけれども、彼が仮面ライダーとして戦える人材であることはすでに示された。それは彼が刑事だからだ。でもこれって、つまりは刑事ドラマのフォーマットじゃないか。ヒーロー番組の突飛さからは一歩後退しているといえる。
しかしそれでも『ドライブ』は仮面ライダーシリーズとして作られている。ベルトを身に着け、スーパーマシンを駆り、おそらく同類の敵と戦い合う。
平成ライダー16作目にして、ついに普通のおもしろさが究められるかもしれない。ちょっと楽しみだぞ、これは。*3

あとは、途中で主人公が影薄くなったり、主軸のストーリーがブレたりしないでおくれよ!頼むぜ!


わたしは、基本的には『鎧武』のような挑戦的なおもしろさの方が好みですし、そこに未来を見たりもするのですが。
でも、『ドライブ』のように堅実に完成度を追求するおもしろさも楽しいです。それに、これはたぶん挑戦し続ける姿勢とは別の難しさがありますから。
平成初期の路線を追求しきった『鎧武』の次に、それとは逆の路線の追求となりそうな『ドライブ』が見られる。
平成ライダーの良いところの一つですね、これは。毎年ガラリと変わるおかげで、いろんな可能性に挑戦することができるというのは。

そういえば今まさに二期の折り返し地点だからなあ。

*1:『カブト』とか。

*2:なんでわたしがこんなに興奮しているのか気になった方は、ひとつの到達点としての『仮面ライダーウィザード』 〜「真っ当」という特殊さ

*3:とはいえこれは、まさしく「刑事ドラマのフォーマット」のおかげに依っている部分は大きいのだけれど。『W』も『ウィザード』も「ハードボイルド」「魔法およびアンダーワールド」の説明があるから