ベイマックス
昨年末、見てきました。おもしろかった!
まあ、わたしが今更なんか言うほどのこともなさそうなヒットっぷりなので、内容というよりその周辺のことを。
さてはて、『ベイマックス』。公開から日がたつにつれ、広告にだまされるな!という声が上がっております。
そう、初めのころのCMでは、あたかも『ドラえもん』のような、居候ファンタジーのように宣伝されておりました。
それはそれで間違いではないのですが、実際の本筋は、原題が『Big hero 6』であることが明かすように戦隊ヒーロー物なのでした。
というわけで、まあ、だまされるな的な喜びと警告の感想が飛び回っておるわけです。
なんですけど、わたしは、この広告戦略をむしろ誉めたいなーという立場なのです。
こんなブログを書いているからには、さては見てきた人からの「だまされるな!」に反応した、と思われるかもしれません。しかし、わたしがこの映画を劇場にまで足を運んで見に行きたくなったのは、一番初期の広告で打ち出されていた、「優しさで世界を救えるか?」のキャッチフレーズ、ケアロボットであるというベイマックスの優しげな風貌、そしてサンフランソーキョーの美しさ、という要素に惹かれてのことなのです。
むしろ、戦隊ヒーロー物と早くに知らされていたら、行かなかったかもしれません。
なぜなら。そしたら、「じゃあきっと、大まかなストーリーは既知のものだろうな」と思い込んでいただろうから。
『ベイマックス』はいわゆるヒーロー物なのか?
『ベイマックス』は実際、確かに戦隊ヒーロー物ですが、見た人ならうなずいてくれると思いますが、パッと想像するヒーロー物とはかなり異なる味わいです。それは、日本のヒーロー物とも、アメリカのヒーロー物とも異なります。
ここでは、ヒーローであること・なること(変身すること)は手段として行われます。超人的な能力を持つキャラクターの大活躍を楽しむ、という展開ではなく、キャラクターたちが前に進むためにヒーローという姿を借りているのです。
『ベイマックス』を見てわたしが思ったのは、「ああ、ヒーローというものがついに特殊な物語ではなくなったんだなあ」ということでした。
ヒーロー物というのはある面キャラクター商法であり、つまりどれだけ魅力的なヒーローの姿かたちを作り上げるのか、というのが出発点で、そのあとにストーリーを乗っける、という作り方だったと思います。そのストーリー部分にも凝りだしたのが2000年以降、ということになるのだと思いますが、やはりメインはキャラクターでありました。それは、ストーリーや設定について取沙汰される平成ライダーにしても、最初にアイディアが出されるのはメイン商品アイテムであるベルト、というところに現れていると思います。
アメリカンコミックスの系統は詳しくありませんが、やはりまずキャラクターというのは同じと思います。
実際のところ、ヒーロー物というのは非常に魅力的な題材です。心の葛藤や社会風刺を、かっこいいアクションや魅力的なキャラクターで彩ることが出来るからです。しかし、最初の成り立ちがキャラクター商法であったことで、どうしてもキャラクター先導型から抜け切れていない印象がありました。
これは、まったくヒーロー物に詳しくない人間の意見です。つまり、すでにキャラクター先導型を脱した作品があっても目に付いていないか、ヒーローに関心のない層にまで及んでいない、ということだと思います。
また、ヒーロー物をパロディ的に取り込んでいる作品はありますが、やはりパロディだな、と感じる方が多くあります。
というところで、『ベイマックス』です。
『ベイマックス』は途中からキャラクターたちが特殊能力を身に着け、ヒーローになっていきますが、しかしそれは実は主軸ではありません。
主人公ヒロの葛藤が、この物語の主眼です。
しかし、一方で、戦隊ヒーロー物の楽しさは踏まえられています。パロディ的ではなく、真正面からやっているのです。
たとえば、物語の一要素に恋愛があるように。たとえば、物語の一要素にミステリがあるように。
ヒーロー物の楽しさが、特殊なものではなく、物語に溶け込んでいる。
『ベイマックス』の魅力のひとつは、ここにあるのではないでしょうか。
まあつまり、あの広告戦略は、色んな人に届かせられるから良かったんじゃないのか、ということです。
確かにヒーロー物であることを隠されると、「ヒーロー物バカにしてんのか!」という気持ちになることも否めませんが、メイン扱いではなく、要素のひとつとして小出しにしていく、という方が、この作品の魅力を広く伝えるのには合っていたんじゃないのかなあ。
むしろヒーロー物として喧伝されてたら、それはそれで「ちょっと違くね?」となっていたと思うし。
ちょっとだけ感想
ベイマックス、好きだ…
個人的には、アクションをインストールされたのがちょっと悲しかった。ケアロボットにはパンチは似合わないよ!
でも、対象者のモヤモヤを取り去るために付き合ってくてれることを考えると、別に非難することはないんだけどね。
まあ、少年的には「空を飛ぶことを楽しめないなんて間違ってる!」だもんね(笑)。カラテが出来たり空を飛べたりロケットパンチを繰り出したりすることは、流れとして至極当然のことなのだ。
サンフランソーキョー、美しい…
いやーもう、これが見たくて行ったと言っても過言ではないけど、その判断は正しかった。
また、アングルの撮り方とかスピード感とか、気持ちいいんですよねえ。
それにしても、ドリームワークスといい、アメリカのアニメ制作者の大人たちは本当にオタクどもだな!(最高の褒め言葉)
でもなにがいいって、オタクであり大人であるところ、なんだよね。オタクであるだけでも駄目。大人であるだけでも駄目。
大学の描き方も好きだなあ。
もちろん、ヒロ少年やタダシ兄さん、メンバーのみんなも魅力的で。あと、カーチェイスの、運転者が交代した瞬間から音楽が変わるのには笑っちゃった。もう、ホント、製作者はオタクだなあ!
全編優しさであふれていて、その優しさに包み込まれてヒロ少年が世界に向かって開かれていくのが、とても心地よかったです。
優しさで世界は救えるよね。敵がいなくても。敵を倒さなくても。
最後に
んで。エンドロールの後にオマケがあったわけですが。
ええええええ!!!
えーと…つまり、フレッドのパパは、すべてのもののパパだ…ってことっすか?
なお、吹き替えで見たので、このオマケのシーンがちょっともったいなかったかもしれない。
でも、声を聞いてもどうせわかんなかったから、いいのかな。
相変わらず劇場はノーリアクションで一人悶えてました。…それとも、みんな大人だから動揺は隠してるの?そうなの!?