double standard

平成仮面ライダーへの思い入れを語ります。現在は更新停滞中。

仮面ライダービルド 21〜23話感想

※一時、書きかけの記事を公開してしまっていました。すみません。差し替えます。

うわあ…(21話を見た直後の言葉)

前回の更新は21話を見る前だったのでした。なんてのんきなことを書いていたんだ…

というわけで、『ビルド』、まさかここまで踏み込むとは思っておりませんでした。
おそらく、平成ライダーで初めて主人公が人を殺したという描写がなされたはずです。
すごいなあ…
敏樹氏でも靖子女史でも虚淵さんでもなくて、武藤さんでなるとは思っていなかったな。

でもこれは、機が熟したとか単純に制作陣の覚悟が固まった、というだけのことではないように思います。
おそらくですが、視聴者に対する信頼度が高まったんじゃないかなーと勝手に思うのです。

実際、これまでも作中では殺人と明言されていないながらも、実質的にそれは行われていました。
それを「これは怪人なんで」という描写で言い訳をしてお茶の間に流していたわけです。
しかしそれは制作陣の及び腰と言うよりは、配慮の一環だったのではないかと感じます。そこまでやっていいのか?みんなついてこれるか?
そういう探り探りの17年間だったのではないか。

平成ライダーが問いを突き付けてきたのは間違いないことで、しかし一方で、視聴者がそれを受け止め時に答えを返し時にさらなる問いを突き返してきたこともまた、確かなことです。

時代も変化しました。痛みをオブラートで包んで提示するには、大人も子どももあまりに生の情報に接する機会が増えています。
そうした中で、「戦争」をテーマにする。ゆえにこそ制作陣はこの判断に踏み切ったのではないでしょうか。
視聴者も受け止めてくれる、むしろだからこそ見てくれるのではないか…そのように。
それくらい信頼してくれているなら嬉しいなあという個人的な願望かもしれませんが。わたしは勝手にそう受け取ったのです。

仮面ライダーグリスについて

とはいえ、ただぶつけてくるようなことはしないのはさすが。
うまいなーと思ったのが、戦兎の葛藤を一話にまとめたことです。見ている時は、えっ初めからこんな重いのぶっこんでくるの!?と思いましたが。逆にあれ引きでやられたら辛すぎますよね…
そして戦いが済んだ次の回では、冒頭に猿渡とミーたんのやりとりを入れることで息抜きをしてくるという。いや、さわさんの「5万円」にはかなり笑いました。
でもそのすぐ後でさらなる犠牲者が出るんですけど!つるべうちか!

さて、話を戻すと赤羽を不本意ながらも確かに自分の意志で殺してしまった(殺す可能性があると知りつつ戦ってしまった時点でもうギルティなのです…)戦兎ですが、グリスこと猿渡がほかでもない仇のはずのその背中を押します。
あれを見た時、なんでグリスが武田航平さんなのか腑に落ちたんですよね。
考えてみれば、殺人を犯して葛藤するってドラマ、現代劇ではほぼやらない・やれない話なんですよね。現代では特殊だから。子ども向け特撮ヒーロードラマだからこそできるのかもしれない。
でも、特殊だからこそ、すごく難しい演技なわけです。
武田さんはすでに平成ライダー経験者です。別に音也は殺人についての葛藤はありませんでしたが、平成ライダーが持つ独特の重さを経験しているわけです。
だからこそ、呼ばれたのかな、と。まあこれも勝手な見方なんですけども。でも、一視聴者として、武田さんがグリスとして立っていると安心感と説得力があるんですよね。それは、音也を知っているからだけではなくて。

あと、猿渡がああも分かった態度をとれるのは、彼が志願兵だからだよね。
説明もちゃんと受けて、なおかつ自分で選んだからこそ、覚悟も決まっている。
それに比べて戦兎と万丈が落ち込むのはしゃーないよ!だって君ら巻き込まれてるだけだもん!そこからどう覚悟をつかみ取っていくか…ということなのだよねえ。

しかしそのグリスも西都のライダーに対しては怒りをあらわにします。
ここ、ちょっとまだ消化しきれてないんですが。戦兎は許して、あいつらは許さないという線引きはしてしまうのか?
これは、仲間を虐待されたから、というのがあると思いますが。でも、だからこそちょっと危険。だって、戦いに感情を入れてしまう――正誤があると決めてしまう考え方だから。相手がいいやつでも悪いやつでも、戦争は戦争だよグリス。
でも……一人の人間としては当然の態度で。
実際に戦争をするのは人間同士だからこそかと思うと、この先が気になります。

戦兎の苦悩

いやー、犬飼さんすごかったですね…やつれ方が…
自室にひきこもってるのも相当でしたけど、個人的には現場に花を持って行ったのがたまりませんでした。

花!花て!そして手を合わせてひたすらに赦しを乞う…

その姿はあまりにも「普通」でした。ヒーローどころか、物語の登場人物とも思えない。近所に住むそこらのお兄さんでした。
花も、とにかく目についたものを買ってきたのかその辺で摘んできたのかというくらいのみすぼらしさで。

殺人とは非日常ではなく、まったくなく、日常の一つなのだとハッキリと突き付けるシーンでした…

決意の「変身!」も、あんな顔して変身したヒーローはまずいないのではないでしょうか。すごい、整った顔なのにぐしゃぐしゃにしたままアップで撮ったよ…
そんな顔するなよ!って言えませんでした。そんな顔しないでよ!ってなりました。

ああ、映画で楽しそうに万丈を煽っていた姿が遠い…
ていうか今こそ先輩ライダー呼ぶ時だよ!映司か紘汰あたり誰か呼んできてあげて!

戦兎とマスター

傷心の戦兎が最後に頼るのが裏切り者のマスターっつーのがまた痛い…ほかにいないのか人材!(いません)

でも戦兎の気持ちもわかる。ハッキリと裏切られたのはわかってるのに、それでもなお、あの時手を差し伸べてくれた温かさを求めてしまうのだよなあ…
いやわたしもつい、ムカつきながらも「でもなんかあるのでは?」とか思ってしまうのですよ。理由があったとしても駄目なことしてるんだけども!

マスター、「おやっさん」なんだよね間違いなく。と同時に、父性の立場でもある。葛城巧は母子家庭だし。
すごいなーこのマスターの造形。父殺しもここに重ねてゆくのだろうか…

戦兎と万丈と美空

さて前回でこの三人について、ちょっと物足りないなーとか言ってましたが、なんでそう感じるのか一つ見えたので書いておきます。

美空ちゃんに戦兎を止めるボタンが渡されました。重い、重いよこの流れ!
なんですけど、意外と重くならなかった。少なくとも戦兎が思いつめた回ほどには。
それはなぜかっていうと、美空ちゃんの葛藤があまり描写されてないからなんですよね。

あそこで、美空ちゃんもまた追いつめられているはずなのです、実は。
ボタンを押して戦兎を止める=殺すのか?という葛藤だけではない。見過ごせば、戦兎が再度殺人の傷を負うと言う葛藤もあるはずなのです。
あれほど苦しんだ戦兎に、さらなる苦しみを背負わせるのか?
でもそれは描写がない。

また、先立つカフェでの戦兎との場面では、美空ちゃんは戦兎に「あなたは人間!」と強く言い切ります。あそこはあそこで感動的なんですけど、一つ引っかかりもあるんです。
なぜなら、ネビュラガスを注入されたとはいえ人間である、と認めることは、戦兎がまぎれもなく言い訳もなく殺人を犯したということも認めることになるからです。
彼がそれをすでに、完全にとは言わないまでも受け止めているとはいえ。言い切るには美空ちゃんにも相応の覚悟が要求されます。
でもそれはするっと流される。

そして美空ちゃんが見守るその中で、戦兎を助けるのは、それまで葛藤がたっぷりと描写されていた万丈なのです。よくきたぞ万丈!

つまり、美空ちゃんが戦兎と万丈を「外から」思いやる立場になっちゃってるんですよね。そこが、関係性がそこまで強く見えない原因なのかなーと。

とはいえ、そこまでやったら辛すぎるから…という判断もありそうだなあとは思う。まあ辛いよね…

西都のライダー

外見を見て、「わー禍々しい、かっこいい!」となり、効果音が叫び声のようで「わー禍々しい、かっこいい!」となり。
変身解除後を見て、「お前かよ!!!!!」ってなりました。声が出た。
まあお手並み拝見かな…(幻徳に対してあたりが厳しいスタイル)(オチ)

この先への期待

本作はビルドもクローズもグリスも、みんな誰かのために戦場に出て傷ついている…という状況の作り方がうまいですよね。見ていて胸がきゅっとなります。

乱戦大好き人間としては、今後、東都と北都が組んで西都と敵対するのかが気になるところ。
今のところ、各ライダーは「国」を背負ってしまっているのがつらいところです。自由のために戦えていないよ!それを乗り越えて、すべての人のために戦えるようになるのか、が一つキーなのでは?とにらんでいますが果たして。

さて、しかしちょくちょくアマゾンズネタが入れられててちょっと笑ってしまう。映画のCMが入るってわかってない段階で脚本作ってると思うんですけど、さすが流れを持ってるな平成ライダー