double standard

平成仮面ライダーへの思い入れを語ります。現在は更新停滞中。

『ゴーバスターズ』という誠実さ-最終回に寄せて

終わってみれば変わったヒーロー番組だったなあ、と。ヒーロー番組に詳しくない身で思います。
これ、実はヒーローが解決してくれる話ではないんですよね。
そこが好きだったのかなあ、結局。

人がよみがえらない話

13年前の因縁が発端で。そのとき失われたものを取り戻そうというのがスタートでした。が、その「約束」は中盤で主人公たち自身の手で破られ、最終話でもまた、一部視聴者の祈るような思いを振り切るように、ひとつのものが失われました。
それをして「シビア」とも「残酷」とも言えるのでしょうが。
わたしはこれを「誠実さ」だと感じたのでした。

死んだ人をよみがえらせないというのは脚本の靖子さんの誠実さなんだと思うのです。
それはつまり、『龍騎』であのエンドを選択した誠実さと同じ種類のものだと思うのです。*1

軽々しくは言及したくないのですが、震災を経たこの時勢で。むしろ人がよみがえる話を描くことの方が不誠実になり得るのではないのか。
もしくはそもそも人が絶対に失われない設定で物語を描くしかない。どっちをとるかで前者を選択したのが『ゴーバスターズ』なのではないでしょうか。

だから『ゴーバスターズ』の誠実さは、この設定でGOを出した武部Pの誠実さでもあると思うのです。
『キバ』でハッピーエンドに持ち込むために井上敏樹氏をメール攻めにしたという武部さんです。やろうと思えば出来たことをしなかったというのは、そうしようと決めたということだとわたしは思います。*2
(ちなみにこの作品に関しては全く制作陣のコメントをチェックしていません。この読みが見当はずれだったらそれはそれでおもしろいですね)

なんの因縁もない青年たちが世界を救う。それでも良かった話に13年前というキーワードを入れたのは、絆を描くためだったのかな、と感じます。
横のつながりだけでも絆の話にはなります(『フォーゼ』がやろうとしたのはこれでしたね)。けれど縦のつながりを入れようとしたならば、その縦の絆を本気でやろうとしたならば、人が失われる話は避けて通れない。それを真っ向やったのがこの物語だと言えるのではないでしょうか。


責任を負うということ

…ヒロムの両親もヨーコのお母さんも、陣さんも死んだ。
そう言い切ると、違うような気がします。
…彼らの思いは、ヒロムたちに受け継がれている。
それもまた、違うような気がします。

というのは、ヒロムの両親も陣さんも、決意があって選択した結果が死だから。だったらただ悲しむだけというのは、彼らに失礼になるんじゃないかなあと思ってしまうのです。それに、その決意というのはつまり、大人の責任の取り方のひとつの形と言えるわけで、とすると、「死んだ」なんて言い方はまったく現象しか述べていないだけで、やっぱり違うなあと思うのです。

「死」を美化するわけではありません。が、「死」が与えられたからといってそれですべてが台無しになるというわけでもないと思うのです。

また、「死んだけれど、ヒロムたちに思いが受け継がれたんだ」というのも違うような気がするのは、結局それでは彼らとヒロムたちだけの話で終わってしまうからです。
そうじゃない。というのは、この物語が「絆」の話で終わらずに「託す」話になったからです。
ヒロムたちは託された。それで終わりかというと、そうではない。託された人が完全無欠だったらそうなるけれど、ヒロムたちは完全ではないから。だからヒロムたちに期待されているのは、託されたことを自分たちなりにやり遂げて、できなかったことをさらに次の人に託すこと

ヒロムたちはだから、完全無欠の解決者ではない。不完全なひとりとして自分の義務を全うしていく。

主人公たちがいろんな意味で絶対じゃないっておもしろいことだと思います。

元に戻せない。だから

「13年前を元には戻せない!」という台詞が、ひどく好きです。
なんだよ、夢をかなえられないのかよ、というツッコミもあるでしょうが、だからです。
「元には戻せない」、それはつまり前に進むということ。
この宣言は絶望のためではない、新たな希望のためのもの、だから。

まとめ

相手を信じ、自分もまた他者に信じられる(ここまでが絆)。それに応える形で責任を果たし、また誰かに託す。つながっていく。絆があるところに託すという行為が生まれ、つながっていく。
結局『ゴーバスターズ』は「絆」がテーマであった一方、「絆」の向こう側まで描いた話になったのではないかな、と思います。それはテーマを突き詰めた結果行き着いた、ひとつの誠実さの形だとわたしは感じました。

*1:靖子さんこの辺頑固なまでにマジだよなあ。そのぶん、話やキャラ描写がブレなさすぎるというきらいもあるんだけど

*2:陣さん関連の伏線をかなり早いうちから仕込んでいたと言うことも傍証になるかと