double standard

平成仮面ライダーへの思い入れを語ります。現在は更新停滞中。

小説 仮面ライダーカブト

ゴーバスターズの話ばっかりしていますが、ライダーファンですよ!


著者:米村正二
出版社: 講談社 (2012/11/30)
ISBN-10: 4063148572
ISBN-13: 978-4063148572

わたしこの話好きだな。


一応畳んでおきます。しかしネタバレ配慮っていつまで必要なんだろうなあ。考えねば。

とってもよねむー(あだ名をつけるな)な話だった!意外に(笑)好きだ。

構成的には、①仮面ライダーカブト誕生 ②クライマックス総まとめ ③後日談 となります。①と②がつながっていて、③は独立した話です。


カブトvsワーム!
①と②の感想から。
たぶん第一話と最終話近辺の脚本を小説仕立てに直したって感じの文章です。よって新奇さも小説としてのおもしろみもないんだけど、映像は浮かびやすかった。真・最終回と思えばいいんじゃないかと。あるいはディレクターズカット版というか。
本放送時は批判が多かったと聞く〆ですが、こうしてみるとわりにお話はまとまっていたんだと分かります。途中経過のせいで記憶がごちゃごちゃしているので、わたしはこれ、頭の整理に役立ちました。

しかしそれでも地獄兄弟は落とされないのがすごい(笑)。サソードとドレイクは陰も形も(あ、ドレイクは最後のとこだけ出るわ)出てこないのに。
ああでも、天道と加賀美だけで話がすすむのは(ストーリー的にはこの二人だけで足りるんだけど)味付け足りないからなあ。そう考えると地獄兄弟はマジで強烈なスパイスだ……
あの衝撃の結末辺りの描写も濃いのでファン的にも見どころかと。

あと、大きなミソは天道の内面が描かれていることじゃないかと思います。彼がカブトとなる直接の原因である両親の死とその恨み、ひよりとの再会、そして決意、と、かなり重要な情報が、しかも天道自身によって語られている。
スタート時点ですでに天道は覚悟完了してたんだなあ。
っていう風に理解してあらためて考えてみると、「目的を視聴者に隠しているヒーロー」ってだいぶ変なことやってたんだなあ、『カブト』。

個人的な感想としては本編でいまいちよくわかんなかったワームの黒幕・根岸が浮かび上がってくるのが良かった。しかし結局三島はなんだったんだ!(笑)ことここにいたってもよくわからん!最初からワームだったの?力を求めて自らワームになったの?よねむーが三島を書いててノリノリだったのは分かった(笑)


後日談 「祭りのあと」
で、たぶんこれがこの小説の本編

「祭りのあと」という章題が示すように、すべての戦い=非日常が終わったあとのその先のお話ですね。
生死の坂を乗り越えた加賀美が退院してみると、関係者はすべて消えていた……
こういう、非日常が終わったあとの、「四畳半クーラー無し生活における喪失感」みたいな話って結構ありますよね。書き手さんが書きたくなる気持ちはわからないでもない。ヒーローのお話よりも、ヒーローじゃなくなってしまった時間の方が、大人には本当のお話だもんね。
で、ここでは加賀美がその喪失感にさまようなかで、ひよりを探して世界の果てまで旅するお話。日本からタイへ、タイからインドへ。ベルト一本鞄に詰めて、いつだって半人前の加賀美がいろんなものを見、感じる話。
わたし、この話好きだな。

米村さんはリアルバックパッカーらしいのですが(オーズ公式読本より)、それが反映されているからか、手ごたえのある話です。タイでボコボコにされる加賀美(笑)。ただ話としてしっかりしすぎて『カブト』(というか加賀美で)やらんでもいいんじゃないかって思うけど(笑)。いわゆる、「オリジナルでやれ!」というやつですな!
でも、なんか加賀美らしい話だと思ったですよ。ボコボコにされる加賀美も、タイに馴染む加賀美も、すごい映像が浮かぶもの。仰向けに転がって夜に叫ぶ加賀美とか。

米村作品はセカイ系とはよく言われることですが。このお話は世界の終わりのその先を書いている。閉じていない話です。
たぶん米村さんは一人称の内面描写の方がうまいし向いているんじゃないかな。群像劇よりも。
この本読んで思ったんですが、米村さんのホンはアニメや特撮の脚本よりも舞台の脚本で見たい。喪失と再生のお話で。あ、見たい。すげえ見たい。

また、それだけじゃなくて『カブト』の話として、加賀美とひよりのむすびつきが語られていたのが嬉しかった。本編では同僚としか描かれなくて、でも映画でカップルにされても妙に納得できた二人のむすびつき。

ひよりとの「ただいま」「おかえり」はすごくきれいだ。
それから岬ワームとの対話もきれい。すごいきれい。あの辺、なんか何回も読んじゃう。

ラストがなんかすごい寂しい。でも、この寂しさは必要な寂しさなんだって思う。いつかまた加賀美とひよりが再会すればいいな。


ところで
ところで…
ここまで語っておいてなんですが……この「祭のあと」、噂に聞くDVD初回特典小説の「世界の果てで君と会う」の再録なんじゃないのか?カブトファンにこれは良いのかなあ…