double standard

平成仮面ライダーへの思い入れを語ります。現在は更新停滞中。

仮面ライダーウィザード 第53話「終わらない物語」

仮面ライダーウィザード』完……
おもしろかったー!なんという特別編。なんという『仮面ライダーウィザード』最終回。そしてなんという『仮面ライダーディケイド』!

お祭り騒ぎ!ってことで、普通に興奮しましたし、メタ的なものとしても噛み応えがあったのも楽しかったのですが。
いやいやしかし、わたしとしては『ウィザード』本編に対して気になっていたことが昇華されてちょっと嬉しかったのですよ。
やるな會川 昇!

では以下。ネタバレなので畳みます〜。長いです!


仮面ライダーとはなにか

いやー、しかし、メタなお話であった。「この物語における仮面ライダーとはなにか」ではなく、ズバリ「仮面ライダーとはなにか」のお話でした。ド直球!

この世界の支配者アマダムは追放された魔法使いであり、仮面ライダーと存在を等しくする怪人であることがこの後半でついに判明。
そっかー、だから「アマダム」なんだね。最後の場面、「同じ石から生まれた」って言ってたし。つまり彼は平成ライダー始まりのクウガに呼応しているわけだ。初代ではなくクウガってとこに制作陣の気概を感じますね!

しかしもっと突っ込んだことをやっているのがこの特別編のすごいところ。では「なにをすれば仮面ライダーと呼べるのか?」。そこまで踏み込むんかい!
そもそものお話の主眼が、この世界を壊すか壊さないかでした。壊せば現実世界に怪人が流入してしまう。しかし壊さなければあのちっこいコヨミや少年が怪人になってしまう。ここで前者を選べばお前らは極悪人だ、正義なんて相対的なもんだ、というアマダムの指摘には一理ある!そりゃ晴人も悩むわ。
しかしそこで登場するのが我らが仮面ライダーディケイド――門矢 士です!やったー、井上正大さんご本人だぜ!

「正義か…。俺はたくさんの世界でたくさんの正義を見てきたが…」
士はこう言います。
「ある人が言っていた…仮面ライダーとは人類の自由を守る、ってな」

いやーちょうど、『仮面ライダー 第1話』(NHK-BS『手塚治虫×石ノ森章太郎 マンガのちから』内)の録画を見たばっかりだったんですよ、わたし。
確かにそこで初代仮面ライダー・本郷 猛は言ってました、「人類の自由を守る」って。「正義を守る」ではなかった!
これってつまりどういうことかっていうと、石ノ森先生に限らず、正義という言葉に慎重ですよね、戦争経験者の漫画家や作家って。
それまで正義と信じていたものが一夜にしてひっくり返る…そんな経験をしているから、善と正義がイコールにならないんじゃないかな。
だから仮面ライダーも人々の行動や思いを守るのであって、お題目を守るわけではないんですね。
ライダーリングで召喚されたライダーたちもまた、召喚主に従うことを拒否しするべきことを選びます。そう自分たちの意思で。
力に屈さず、意思により行動する。それが仮面ライダーなのかな。
うむ、士は一号の世界を巡ってきたに違いない。

アマダムVS晴人&士のあの場面で、アマダムとともに彼らに対峙する怪人はオルタナティブ、アーク、バッタヤミーって意味が濃い。数いる怪人の中でも、特に仮面ライダーの映し鏡というか似て非なる存在と設定されているやつらですからね。

結局、少年たちを魔法石の世界から解き放ってあげることはできなかったけど。でも、わたしこういう前の向き方も好きです。
運命そのものを壊せなくても。未来を引き寄せることは出来る。そういう前の向き方が。
大丈夫、きみなら出来る。そして、きみ以外のたくさんの人たちも……
ああ、「境界線上の存在としての不安定さと強さ」もちゃんとやってるなあ。すごいなあこの特別編。

それにしても指輪を渡したり侵入したりと仁藤は仕事の出来る男だなー。
魔法の相互置換作用、もしかして限りなく久しぶりでは?最後にやるとは!
ウィザードはちゃんと全フォーム出したんだねー、すごいなー。
VSアマダム完全に力負けという描写が素晴らしかったです!


良かったね、晴人

さて、今回の特別編。ことほどさよーに枠そのものに挑戦していてそこもおもしろかったのですが。
いや、リ・イマジ『ウィザード』としても優れていたと思うのですよ、わたし。

というのはですね、この特別編で、晴人くんがひとつ、達成を得られたから。
ん?「コヨミを助けられて良かったね」?…いや、そうなんですけど、そうではないのですよ。

51話まで見終わって。ふと気付きました。晴人の手にはなんにも残っていないんじゃないかしら。
『ウィザード』における仮面ライダーの在り様は「最後の希望」であることでした。これはつまり晴人は受け皿みたいなもんなんですよね。そこで滞るはずだったゲートの願いをウィザードが身をもって解放してあげる。でもそこには、ウィザード=晴人個人の欲求や願望は関っていない。
だからコヨミちゃんは消えたんだと思うんですよ。あれが彼女の「最後の希望」であるなら、晴人はそれを叶えてあげるのが役割。引き止めたりはしないんです。願いをその身を持って昇華してあげる。それが自分にとってどれだけ悲しいことでも。人の願いを尊重してあげるのがウィザードの在り様なんですね。
でもそうすると晴人の手にはなんにも残らないわけで、それに気づいちゃうとなんか寂しくなったんですよ。

他人のために身を削るというなら平成歴代もそうじゃないかって話なんですが、でも平成歴代はその一方で手に入れているものがあるんですね。
巧や映司なんかは人助けそのものがアイデンティティの確保につながるし、一番昭和的と言われる五代だって、ああならなければ出会えなかった人たちとのつながり、というものを手に入れている。それは得た重さには見合わないほどちっぽけかもしれませんが、しかしかけがえのないものです*1。一番悲惨と言われる剣崎だって、果たせなかった仕事を果たし、親友を救えたことについてはたぶん喜びがあったと思うしさ。巻き込まれ型の真司や良太郎も、結果として戦いで生が充実していく。*2
でも、晴人にはそのどれもない。一応、古傷は癒せましたが、あれは別に謝りにいけばなんとかなったような話ですから、達成とは言い難い。
ウィザードになったことで晴人にはプラスがないんですよ。
いやなんかそれはさすがに可哀想じゃないですか。それが昭和的な彼岸のヒーローならそれでいいかもしれないし、メイン脚本のきだつよしさんは現代でそういう昭和的なヒーローがやりたかったんでしょう。でも、やっぱり今は平成で、デフォルメなしで人として描かれて51話付き合ってきた視聴者としては、申し訳なくなるわけです。

ウィザードって幸福の王子みたいな存在なのかな。でも、ウィザードだってやっぱり人間だしなあ。

というモヤモヤとまではいかないけど、小さく引っかかっていた部分が今回昇華されてわたしは大満足なのです。

今度はコヨミが助かって良かったね、ってのはちょっと違う。本編のは本編のでコヨミの選択だから。
コヨミを助けられて良かったね。晴人の達成として
また、最終話で突きつけられた怪人と仮面ライダーのボーダーラインの問題を、しっかり悩み、答えを得られたことも達成だと思います。なんかスッキリした顔になったじゃん、晴人。うむ、やっぱり悩んで悩んで出す答えこそが自分の自信になるんだよね。
少年が自分の写し身とは知らないままでしたが。でも、気付いていなくても少年を助けることはすなわち自分を助けることだったのはきっと晴人もわかってる。
良かったね、晴人。

ああそれにしても本編の取りこぼしを再構成して昇華する。まさに『DCD』、まさにリ・イマジネーション!
これは特別編であり、また『仮面ライダーディケイド ウィザードの世界編』でもあったわけです。すごいなあ。
なんかもうスッキリしたよ。これにて、『仮面ライダーウィザード』真の完!です、わたしの中では。


ディケイド、ふたたび

しかし完全にディケイド出張っとったなー。さすが世界の破壊者!

今回の士は、ちょっと後輩の様子を見に来たって感じですね。『スーパー大戦』のときみたいな深刻さはなくて、余裕があるというか。わかっててちょっと遊んでやるかって感じで、まったくもう人が悪いぜ!相変わらずだね!

歴代ライダーがキャラクターに還元されてもディケイドだけは井上正大さん。まあこの辺はオファーが通るとかの理由もありますが、やっぱりディケイドって特異点のようにずっとオンリーワンのままなんですねえ。

ところでわたし、士がシャッターを切るところ、ちょっとよく読み込めないでいます。
會川脚本は、わたしと波長が少し違う…というか、見ている角度が違う…というのか、ストンと落ちてこないところがあるのです。
「正義か…。俺はたくさんの世界でたくさんの正義を見てきたが…」ってとこなんですけど。
カメラとは士にとって世界との触れ合う方法であるわけで。一方でその世界の大事なものを切り取る目であり。つまりあそこで晴人に対してシャッターを切るって言うことは、晴人が悩んでいることは実は大事なことはそこじゃないんだよ、っていう示しになるのかしら?うん?


ライダー大戦ふたたび

歴代ライダー大活躍!というわけで、さすがのこだわり、全員「らしい」見せ場がてんこもりです。燃えた!

まず通常フォームでの戦い。
カメラに向かって滑り込んだファイズでフィニッシュってカッコイイなオイ!
紅になった響鬼を中心にカブトとクウガが交錯して着地して三角形の構図になってキメって痺れる!しかも赤まとめだコレ!
ライトアップファイズ、キター!!!
キバはちゃんとカテナ解放してからのキック!
そして外へ出てからもいっさい手は緩めず。巨大戦キター!!!
って言ってたらFFRもやるのか!そしてディケイドがクウガゴウラムに乗る、と!なんという『DCD』本編再現!
カブトエクステンダーの登場でテンションがあがった理由がもう自分でもよくわかりません!

てゆーかもうライダー大戦じゃないかこれ!

「任せろ!」っていちはやく起き上がる弦ちゃん、若いなー(違います、一人だけパワーを取られてないからです)。

声は違うけどキャラを寄せてきているのでわたし的には可。ブレイドの突っ込みおもしろい。でもオーズはとりあえず「セイヤー」って言わせとけば良かったと思うよ。
ほぼ全員しゃべったと思うんだけど、ファイズの記憶がないんだよね…先週しゃべったのかな?

そして歴代順にとどめのキックとは芸が細かい。
全員最強フォームになるわけですが、オーズはスーパータトバなのか。まあプトティラは原型とどめてないしね。
こういう場面でライナーフォームって珍しい気がする。しかしライナーで「俺、参上!」のポーズはえらい違和感あるな。

それにしてもばんばか爆発するなー。


あと、戦闘シーンだけじゃなくて、石田監督の映画みたいな画は本当にすげえな。晴人と士が会話する場面と、ラスト晴人とちび晴人が草原にいるのを遠方から撮る画と痺れたんだけど、やっぱりラストの指輪を渡してからのあの流れは素晴らしすぎる。走っていくちび晴人がわずかにスローモーションで、早すぎず遅すぎず間を溜めて。
指輪を渡した瞬間からあの曲が流れ、曲が終わるあの瞬間にあのラストという素晴らしい演出でした。いいもの見た!


終わらない物語

というのが今回の副題でしたが。
終わらない物語つまり続いていく物語、というのは晴人本人のことでもあり、ちび晴人とちびコヨミのつむぐこれからのことであり、平成仮面ライダーのことでもある。
これから先の繁栄の言祝ぎなんですね。決してネガティブな意味じゃない。
仮面ライダーとはを問い直し次作へつなげる!この2話は特別編として相応しく、また一方であまりにもメタでしたが、しかしその掟破りが平成ライダーらしいとも言えると思います。

得た答えを鎧武に渡して引継ぎっていうのはキレイ!本人はよくわかってなさそうだけど(笑)。
でも、「自由を守る戦士の名だ」「助けを呼ぶ声があれば必ず駆けつける」って言われて、「それじゃあ仮面ライダー鎧武だな」ってあっさり引き受けるその気負いのなさ、悪くないぜ。現代っ子らしい軽やかさで。あ、ダンス見たよ!本編でもバック宙期待。

ちび晴人は服のせいか知らんが足長いなー。

會川さんのさすがっぷり、素晴らしかったです。また登板してね!待ってるよー。

*1:ここんところをないがしろにしちゃうことになるからわたしは例の小説にムキになっちゃうのだ

*2:達成がないと言えるのはヒビキと弦太朗ですが、別にマイナスにもなってないからそもそもの出発点が違う気がする