double standard

平成仮面ライダーへの思い入れを語ります。現在は更新停滞中。

『仮面ライダーウィザード』を見終わって(総合的感想)

というわけで総括です。
みなさまの中ではいかがだったでしょうか?
わたしにとっては、大きなものが突き刺さったわけじゃないし、そりゃ印象もちょっと薄いけど、毎週『ウィザード』が放映されていたということはなにか小さな良いことだったように感じています。真っ当で、優しかったから。

というかすでにしてこんな記事を書いておりまして。
ひとつの到達点としての『仮面ライダーウィザード』 〜「真っ当」という特殊さ - double standard
結局最後まで見終わって、やっぱりわたしにとっての『ウィザード』ってこういうことだな、と思っています。良ければどうぞ。インフィニティ回の後書いた記事です。
わたしはここで、『ウィザード』および主役の晴人が薄いことを作風の真っ当さの表れとして評価しています。そうです、『ウィザード』は強烈な作品ばかりの平成ライダーシリーズの中で異質なほどに真っ当で、だから薄いのです。

薄味で、従来のファンには食い足りないとは思います。が、子どもや、本当に本当の「子どもと一緒に見ている親」とかにはコレでいいんじゃないのかな。なんだかんだいってちゃんと伏線も張って丁寧にお話をつくっていたし、目先に囚われず堅実に作っていたし。っていうか、上記の記事でも言いましたが、6〜7割の力でアオリを一切排除して子ども向けに徹底しながら従来の平成ライダーの特徴である長いスパンの物語を入れて描写もきっちりやったというのは評価していいと思うんですよ。
ただね、こんな感じのが2・3作続いたらすぐに番組枠終わっちゃうと思うけどね。

この作風の上で、テーマの掘り下げがもうちょっとだけ濃かったら新しいムーブメントが起こっていたような気がします。

わたしはこの作品を平成ライダーの良心と呼ぶ。

とはいえやっぱり不満というかどうかなーと思う点もあるんですよ。


晴人キャラ薄い問題

薄いのは薄いでいいんですが、最終章に入ってから間抜けな場面が増えちゃったのがなー。
っていうか、話にからまなすぎだよ晴人くん。それはどうなのきださん!
ずーっとコヨミちゃんのことで落ち込んでるばっかりでさあ。
山本さん覚醒の話とか、晴人くん関係なさすぎだもんよ。しかも、主役の見せ場は窮地に陥らせてから!っつーのはわかるんですが、晴人が窮地に→仁藤が間に入る→晴人逆転って流れが多くて印象に残りすぎて仁藤の方が目立ってたよ終盤!しかも仁藤は迷ってない上に譲を助けるという使命に燃えているから顔がすがすがしくてかっこいい。うん仁藤かっこいい。いや待て。
歴代でも何回かあった問題なんですけど、主人公って看板もたせていれば大丈夫って考え方はよくないと思うんですよ。主人公だからこそしつこいくらい描かないと。背景にしてどーする。


仁藤はなんだったんだ問題

で、その仁藤なんですけど、わたしもうずっとこの問題が気になってる。
いやキャラ立ってるし、おもしろカッコイイし、大好きだし、別にいいっちゃいいんですけど。
この『ウィザード』という物語の中で共闘するという意味しか持ってない…肝心のキマイラの問題もあっさりだったし…いやあれかっこよかったけど…いいんだあんなあっさりで…
「古の魔法使い」っていう設定も映画版でしか意味を持たなかったし。
ないがしろにされていたわけではなくむしろ大切にしてもらっていたけどなんか納得がいかないんですよ…


ウィザードは境界の存在か

『ウィザード』が薄味だったその一因がこれじゃないかと。
当初聞いていた話では、『ウィザード』は原点回帰して「孤高のヒーロー」、「異形の力」をやってくれるというんでしたが。…やってたか?
別にわたしは薄くてもいいんですが、最初にテーマって言われちゃうとなー。
まあ無理してヒーローしている感はありましたが。普通の人だもんな、晴人くん。

グレムリン=人の心を保ったままのファントム=ソラと仮面ライダーウィザード=晴人が等価で表裏一体の存在、ってのはいい。いいんだけど、最終話だけじゃなくてもっと前から輪郭を描いていた方が良かったんじゃないのか?
わたし、ここがちょっとよくわからない。
スタッフが『ウィザード』をあまり葛藤に踏み入れさせない番組にしようとしたのはわかるんですよ。だったら、このテーマもこの薄さでいいのかもしれない…?
そうかなあ?
あとなー。これは当初より思っていたことでしたが、結局。
魔法使い>>>>仮面ライダー
だったのもどうかと。
この辺、描きようだと思うし…まあスタッフがそう狙ってこうなったんならいいんですが…そうではなくて、これで「テーマを描ききった!」と思っているなら、それはどうかと思うです

わたしとしては、むしろ近年の「仮面ライダーの異形感の薄れ」の一つの現れに見えてしまうなあ。うーん。
(※この問題に関しては後日、補足します。「女の子は仮面ライダーになれたのか」問題にからめて)


でも好きですよ『ウィザード』

まあそんな風に疑問もありながら、でも総合的にわたしはこの『ウィザード』好きだったですよ。

スタイリッシュかつ優しくて。刺激はなかったけど安心があった。
メイン脚本のきださんよりはサブの香村さんの回の方が好みではあるんですが、でもきださんの真っ当なくせに説教臭くないところ、嫌いじゃないよ。変わった人だなー。

戦闘かっこよかったー!
派手派手モーションじゃなくて、一手一手確かな攻撃なのが良し!マントがヒラヒラはためくのも良し!攻撃としての確かさと見栄えが成立していて、個人的に評価高し。エクストリームマーシャルアーツというのを取り入れているそうです。初めて聞いて見たけど、これカッコイイなー。流行ればいいのに。
同工異曲だった従来のアクションと別路線を打ち出していて、幅が広がったというか、新たな平成ライダーアクション、って感じがしました。この系譜はどこかで続いて欲しい。
あと仁藤こと永瀬匡さんの生身アクションもかっこよかった!キックが重そうな人好き。

それからベルト!わたし今回のベルト、もしかしたら歴代で一番評価するかもしれない。
ベルトおよび関連アイテムがすべて「手」で統一されていた…っていうの。気付いたとき感動しましたもの。

なんか、テーマが動作でしかも作品テーマに絡む(人と人がつながる)っていうのは今までなかったんじゃないかな?門外漢が言いますが。

キャラクター…っつうか、役者さんもみんな良かったですね。
危なげがなかったなあ、みんな。頼もしい!見ていて安心感がずっとあったのはこのためだろうな。…まあそれをして爆発力がないとも言えますが。
でも白石隼也さん演じる晴人かっこいー
永瀬匡さん演じる仁藤かっこいー
奥仲麻琴さん演じるコヨミちゃんけなげやー
描き方も、みんな優しくて好きだった。押し付けあう正しさではなく、互いを思いやっていたのが好きでした。
ゲスト怪人もみんな怖くてよかった。レギオン村田充)とかシルフィ(粟根まこと)とか、いい感じに狂ってたよね。…中の人って言わない。


そりゃ、正義の線引きとか、踏み込まないのか…って寂しさはあるけどさ。
夢中になる、ってんではなかったけど。平成ライダーに違う流れが入った感があって、おもしろく見ましたですよ。