double standard

平成仮面ライダーへの思い入れを語ります。現在は更新停滞中。

劇場版 仮面ライダーウィザード イン マジックランド

おもしろかった!…んだけどなんかいろいろ考えちゃった。内容うんぬんにではなく、平成ライダーの一本として。
なんだか予想以上の実の詰まり具合でした。

イン マジックランド

キョウリュウジャー』にツッコミ入れてたらこっちも唐突に始まった(笑)。
儀式のシーンから始まるのはいいんだけど、その後にせめて一言「コヨミが突然連れ去られて探しにいったらこんなことに…」みたいな台詞があったらスッキリするのに…なんかずっと戸惑ってしまいました。
ちょいと初見・未見の人をおいていきすぎですよ、今回の両劇場版。劇場版『電王』みたいな仕掛けの映画はそれでいいけどさ。

などと不満から始まりましたが、全体にはおもしろかった!香村さん、渾身!

みんなが魔法を使える世界。
パラレルワールドじゃなくて違う世界に行くってのは平成ライダーで初めてですね。
でも、あれは別世界へ行ったわけじゃなくて、もとあった世界が作りかえられちゃったんですよね?だから晴人とコヨミは、別の世界から来たっていうよりも元の世界の記憶がある、っていうのが正確なのかな。

みんなが魔法を使えるということは、変身できるのがウィザードだけではないということで、街の人がメイジに変身!てのが本作の見所の一つ。
というわけでレギュラーキャラが軒並み変身だ!おめでとう、みんな!(笑)
瞬平、良かったな!凛子ちゃん役の高山侑子さんは変身するときニヤニヤしすぎ(笑)。輪島のおっちゃん…小倉久寛さんも嬉しそうで、なんかこっちまで嬉しくなった(笑)。

ただ、これ、変身後はみんな一緒の格好なんですよねー。仕草で大体誰かわかるのはさすがの平成ライダーなんですけど、やっぱり判別しにくい…せめて男女で爪やしっぽの色を変えるとかして欲しかったなあ。乱戦のとき辛いっす。
けどそうすると店長はどうするんだって話になるんですけど(笑)。

しかしこの流れをちゃんと捉えてここ触れるとは思わなかった。晴人=ウィザードのアイデンティティ問題
晴人がウィザードやってる理由の一つは、「自分しかウィザードになれなくて、ウィザードにしかファントムは倒せないから」なわけですが、これってつまり他に人員がいれば晴人の戦う意義がなくなっちゃうという問題もはらんでいるんですよね。
とはいえ本編でも仁藤が出てきたときにさえやらなかった話なので、まさかここに来て触れるとは思わなかった。

しかしその問いに対する晴人の答えが(笑)。
「それならそれで、いいのかもな」…なんて、ちょっと寂しそうで、でも肩の荷が降りた表情で……
そんなもんか!そんなもんなのかやっぱり君は!
いや、でも確かにここで深く落ち込まれても「え?」ってなるしな。ということは、香村さんはやっぱりそういうちょっと薄目のキャラとして晴人を掴んでいるのか。これはちょっと発見だ。

一方コヨミちゃんは「一人だけ魔法が使えない」というポジションに。
とはいえこれは「一人だけ違う」、っていうことよりも、元の世界でも晴人の足を引っ張ってるんじゃないか役立たずなんじゃないかって悩みがあるから、より「なんにも出来ない自分」を意識して落ち込んだんじゃないかな。けなげやなあ。

という感じで『ウィザード』の最大の特色である「魔法」を使いまくった舞台設定でしたね。ちゃんと、設定だけじゃなくて、画面のそこかしこに魔法を使っている日常が見えて良かったなあ。わざわざクローズアップしない背景でそれをやっててくれるからこそ、そういう世界なんだって理解できるから。
きっとあれは中澤監督のセンスなんだろうな。

それにしても…仁藤は出オチ(笑)。いいわー、コイツ本当いいわー(笑)。香村さんは完全に仁藤番。
もうちゃんと「考古学専攻キャラ」として成り立ってるよなあ仁藤。ただの意匠として片付けられると思ってたのになあ、当初。
すり合わせ切った香村さんに拍手。掴み切った永瀬匡さんにも拍手!「みなまでゆーな!」の言い方が好きです。
映画の話に戻ると、確かにコイツは古代人を研究するために同じ生活しそうなヤツだ(笑)。
ファントムを食わなくても大丈夫、と説明するくだりは芸細。
マヨ釣りとか小ネタもうまい!ひとしきり笑いました。


物語のつながり

さて、本作、いくつかの要素があるわけなんですが。
最初の20分くらいの状況説明を抜いてざっと見てみると、シイナの話、オーマの話、宮殿潜入、晴人指名手配、ラストバトル、くらいに分けられるのかな。
ちょっと気になったのが、これがパートごとにくっきり分かれすぎていて、見ていて追いつかなくなることが多々あったことなんです。
次のパートに行くと前のパートのことを忘れちゃうんですよ。これはわたしがぼんやりさんだから、だけじゃないと思います。
有機的につながってない、っていうのかな。パートごとに一段落しちゃって。やっぱり名残りがないと映像という流れの中では人はすぐに前のことを忘れてしまうんですね。

でもこれって、要素がちゃんと多い、とも言えるんですよ。
有機的じゃないなんて勝手な文句言っておきながらですが、これだけの要素を入れきったのはすごい!と思います。
だって各パート、全部重みがありますもん。それぞれ取り出して30分1話出来ると思う。
つなぎが悪いのはたぶん香村さんがまだ映画の尺に慣れていないからだと思うんですが。これが全部きれいにつながったら見応えがすごかったと思う。
それが惜しい、というんではなく、すごく気になったので、今後の香村さんの登板に注目していきたいと思います!


VSオーマ! そして戦隊と仮面ライダーの戦闘スタイルの違いについて

香村さん渾身といえば、マヤとオーマのくだりですね。ここはすごかったなあ。いや、演技者二人の「存在してる」感がすごかった。
説明こそ少ないんですが、背後にいろいろあったんだということが伝わる。そして伝わる脚本だからこそマヤ大王役の忍成修吾さん、オーマ役の陣内孝則さんのあの演技が実現したんだろうな、と思う。いやもう、引き込まれました。白石さんもよくついていった!あそこはちょっと、すごいですよ。

ただなー。ちょっと不満があるといえばオーマの出番が後すぎて「ん?誰こいつ」ってなった。顔見せくらいは早い段階でしておいて欲しいっす。

それにしても、最初は見ていて「この世界ではファントムの存在意義はなんなんだ。自然災害みたいなもんか?」などと思って、ファントムが軽視されていることに疑問を持っていたりしたのですが、いやーまさかこの世界を作った金の魔法使いがファントムだったとは!これはしてやられたぜ。
ていうか、ファントム、魔法使いになれるんだ…そしてあのドライバーはどこから?ちょっと引っかかっています。
本編を四話ほど貯めているせいなのかな?…でもそういうことでもないような気がするなあ。

ほんでもってウィザードVSオーマの最終決戦は良かった!正直、歴代ベストバウトに入れたいところ。
でもちょっとためらうのは因縁が足りないところ…オーマ、後から出てくるからさあ。
いやーでもかっこよかった!なにがいいって、変身早撃ち勝負からの魔法合戦。ただの打ち合いじゃなくて、相手が何をするか見、読んで、それに対抗する魔法を繰り出す。これこれ、こういうのが見たかったんだよ!一手間違えたら即アウトの緊張感がちゃんとあってすごみがあった。
ウィザードが手すりの中に逃げ込んで仕切りなおすくだりが好きです。うおーかっこええ!
そんでもってフラワーの指輪!いやー、「シイナ借りるぞ!」つって「いや、それ何の役に立つのさ」とか思ったら、フラワーシャワーで目潰しときた!そしてそれにより出来た隙でインフィニティに変身する、と。うまい!うまいぞウィザード!
花びらの乱舞の中変身、って、さすがウィザード、キザですな!
薔薇の花びらだったらもっと華麗だったのにー。でもよく考えてみたらそれは『幽々白書』の蔵馬だな…

最近、巨大戦で〆が続いてましたが、こうした一対一の戦いこそが仮面ライダーの見せ場だな、とあらためて思いました。ド派手に決めるのもいいですが、こう一手一手積み重ねて勝利をつかむと言うのは等身大ヒーローだからこそのおもしろさなわけで。

キョウリュウジャー』見ていて思ったんですよね。ああやっぱり戦隊は物量だ、って。
門外漢が知った口をきくわけでちょっと恥ずかしいんですが、やっぱり戦隊と仮面ライダーの戦闘は似て非なるものであるし、あるべきなんですね。で、どう棲み分けるか、っていったら、戦隊はもともとメンバーが複数だしロボも持ってるしで物量で見せる。ライダーは単体だから、その体さばきで見せる。っていうのがベストなんじゃないかしら。
キョウリュウジャー』の話になっちゃうんですが、なんか見ていてわたし、坂本監督のはライダー仕事より戦隊仕事の方が好きだなって思ったんです。きっと坂本監督が詰め詰め・おせおせが得意だし好きなんだろうな、と。ということは、その辺の違いが戦隊とライダーの違いなんじゃないのかな、と思ったりしたわけです。

まあ単純にわたしの好みの話なのかもしれませんが。うむ、こーいうので行こうぜ、こーいうので。

ちょっとさかのぼって、ウィザードが親衛隊に追われるバイクチェイスのところもかっこよかったな。炎をバックにカットが決まるところ。中澤監督さすが!

アンダーワールド戦を中盤に持ってきたのも良かったなー。


あとついでに

あとは細かいところ。
宮殿潜入のところ好きだなー。晴人と仁藤が近衛兵(?)の服にチェンジするところとか。仁藤が敬礼の腕間違えるのとか。でもって、チェス盤操作で隠し扉を見つけるところろか。仁藤はこーみえてちゃんと学者!タナトスの壷を見てすぐ理解するのもよかった。っていうか、この壷、かなりのホラーでこういうのも描けるんだ香村さん。
晴人はチョーイイネ!口説いてドア(cv.福田彩乃)を開けさせるくだりなんかサイコー(笑)。「正解はなんだったんだろう…」って呟きにも笑った。
ちゃんと二人らしい見せ場があって良かったっす。

晴人役の白石隼也さん、決めの場面では低く抑えた声でしゃべるのがいいですよねー。凄みがある。
コヨミちゃんに石が当たったときは、「なにしやがる!」ってマジで思った(笑)。コヨミちゃん役の奥仲麻琴さん、顔が白すぎてはかなすぎるよー。
しかしこいつらは終始ラブラブだったな(笑)。


というわけでおもしろかったです!なんか思ったより長くなっちゃった。
いろいろあった引っかかる部分。これが次につながったら平成ライダーはまだまだ新しくなるだろうな。なんか、そういうのが見れたのがちょっと収穫。でもそれはちょっと邪念過多な見方だ…スミマセン。