double standard

平成仮面ライダーへの思い入れを語ります。現在は更新停滞中。

永遠の平成仮面ライダーシリーズ 語ろう!555 剣 響鬼


出版社:カンゼン(2015/01)
ISBNコード:9784862552853

各方面の論客にインタビューを敢行し、思い入れを語ってもらうことで「平成ライダー」を今一度捉え直そう!
とするシリーズの2冊目です。
1冊目がとてもおもしろかったので、続編が出てくれて嬉しいです〜。(1冊目の感想はこちら

いや、本当に、著名人とはいえファンが語り倒すだけの本なのですが、それが楽しいし実があるんですよね。
思考のくっきりした方が語れば、それだけで批評と同じ力を持ちうるんだよなあ。

評者のラインナップは以下。

前回は7人だったのが、今回は10人のインタビューがおさめられています。その分、一人一人の思い入れの濃度は下がりましたが、多面性という部分は広がったかと思います。

三作の共通点とは?

さて、今回のテーマは『555』『剣』『響鬼』。
1冊目が『クウガ』『アギト』『龍騎』という三作区切りを受けてのことだとは思うのですが、この三作はバラバラすぎて、まとめて語るのは難しかろうなあ…
と勝手に思っていたのですが。どっこい、むしろこの区切りによって浮かび上がってくるものがありました。
それは、「激動期」。そう、「クウガ・アギト・龍騎」の成功を受けて、仮面ライダーは平成仮面ライダーとしてどのような方向性をつかみ取ろうとしたのか・つかみ取れたのか。
ほほう、なるほどなあ!

というのは、後から来たファンとして、わたしは『555』を集大成と捉えていたんですね。
ですが、この本から浮かび上がってくるのは、前三作の挑戦と成功を受けて、荒野となってしまった現場の苦しみでした。
『555』はある意味で、苦し紛れだったんだなあ…だからこそ、あそこまで怪人と人間とヒーローの境界線に切り込むことになったんだ。
うーん、やっぱり、リアルタイムと後からでは、印象って違うものなんですね。

この本の意味

今作は前作とちょっと様子が違っていて、というのは、なんかこう、ハッキリしない感じなんですよね。
『555』とは、『剣』とは、『響鬼』とは、なんだったのか。そしてこの三つが並んだことがなんだったのか。それが、ハッキリしない。
評論的には物足りないなあ…と感じていたのですが、ハッと気が付きました。
そうか、今ここでやっとこの三作が正面から語られているんだ!

初期三作は、大成功をおさめました。それがゆえに、語られる機会も多く、思考も練られていったのです。
しかし、中期三作は、『555』はまあおくとしても、なかなか「大成功」とは言えませんでした。そのため、「どうして上手く行かなかったのか」ばかりが語られ、何を成し遂げようとしたのか・成し遂げられたものはあったのか・失敗も成功も後続に何を与えることが出来たのか…といったような、「まとめ」がされなかったのです。
響鬼』は応援の意味を込めて何冊も本が出されましたが、それはあくまで『響鬼』についての話であり、シリーズ通しての概観、というのはあまり見られなかったように感じます。
つまり、今ここで、やっと中期三作についての思考が練られ始めたのだ、と言っていいのではないでしょうか。

『剣』からは後期脚本を担当した會川さん、『響鬼』からは前期プロデュースを担当した高寺さんが来てくれているのがこの本の白眉でしょう。
むろん、それがそのすべてではないとしても、転換に大きくかかわった人の感想というのは重要ですし、お二人ともやはり今まであまり語る機会もなかったようですし(事情が事情ですしねえ)。
とりあえず、『剣』の大ファンであるという鈴村健一さんの絶賛を読んだ後に會川さんの裏話を読むと、つい目頭を押さえてしまいますね(笑)。がんばった甲斐あったね會川さん!
高寺さんが『響鬼』について、プロデューサーとして語ってくれているのが個人的には嬉しかったですね。なんか、そこ、大事だと思うんですよ。
あ、あと、『響鬼』第一話のミュージカル演出は、責任者は石田監督ではなかったと知れて収穫でした。ごめんね、高寺さんと石田監督ならノリノリでやりそうだな、とか思い込んでて(笑)

話がどうしても長くなる高寺さんに対して、「おにぎり持ってきました!」と答えるインタビュアーさんに拍手(笑)。

今回の女性論客…と今後への注文

今回の人選で目を惹くのは、やはり紅一点でもある二ノ宮知子さんでしょう。
ちなみに、一読者であるはずのわたくしですが、前作の感想で女性論客について一席ぶってしまい(というほどの内容ではありませんが)それを関係者に読まれる、という流れがあったため少々気にしておりました(笑)。
そこを踏まえまして二ノ宮さんという人選には「ほお」となりました。ただ、新世代女性ライダーファンの代表、という点では良いのですが、やっぱりこの本では中期三作のどれかについて語る人が欲しかったなあ…という気持ちは拭い去りがたく。すみません、注文多くて。
でも、特に『剣』は根強い女性ファンも多いみたいだから、読みたかったなあ…

二ノ宮さんは女性として、子どもを持つ母として、そして漫画家(クリエイター)として語れるのが強みですね。
二ノ宮さんは『ウィザード』から入って、現在徐々に歴代を消化している最中だそうです。『W』の大ファンってことで、むしろ『W』のときに呼んであげて欲しかったけど、遠いか(笑)。
「かわいい、っていう視点があるかどうかが、女性ファン…というか母親層には重要」という旨の発言にはなるほど、となりました。

個人的には、ずっと昔から特撮を見てきた女性著名人って絶対いるだろうから、そういう人に、変遷みたいなのを聞いてみたいなーって思います。
でも、この本を読んで思うに、特撮男子たちが一番知りたいのは、「なんで平成ライダーになってからこんなに女性ファンが増えたの!?」なんですね(苦笑)。
まあ、デートに『ゴジラ』を選択したらふられた、という過去が山積みだというんだから仕方ないとは思いますが(笑)。

でも、ここでわたしは声を大にして言いたい。そこから一回離れようぜ!
っていうか、なんでなんでと言うけれど、結論はたぶんもう出てるんだって。お話としてちゃんとおもしろいからだよ!
自信を持って!「特撮だから」「特撮なのに」とかあんまり関係ないから!なぜなら女性は特撮というジャンルに本当に興味がないから、逆にスルーしちゃうから!

女性を誘うのときっと一緒ですよ(我ながら適当な例えですね)…なんで?どうして?とか聞かないで自然体に接していれば、おのずと見えてくるのではないのでしょーか。
まあ、本気で知りたかったら大規模アンケートとるしかないんじゃないすかね?

あと大雑把にそのほかの方々

虚淵玄

二ノ宮さんと同じく、中期三作ではないお話が中心。まあしかたない、『鎧武』終わったばっかりだからな!
でも、すごくおもしろかった!やっぱり、外部の方だからか、今までの関係者がしないようなぶっちゃけ話が満載で(笑)。そ、そうか…そこまでストップかかっちゃうんだ…
そんな裏事情を踏まえると、本当に『鎧武』はがんばったね!こうなると、制約が格段に減る小説版が楽しみだね!
戒斗のバックボーンがなぜ薄いのか、などにも言及されているので、中期三作に興味がない『鎧武』ファンもこの項は読んだ方がいいと思うな。

森次晃嗣半田健人

ヒーロー作品の主役を務めた新旧のお二人、という対比でわたしは読みました。
森次さんが何十年もかけて行き着いた境地に、半田さんは今まさに足をかけたところなんだなー、と。
半田さんの、巧を評する言葉に、ちょっと泣きそうになったり。

井上伸一郎白倉伸一郎井上敏樹

評論的に読みごたえがあったのは井上(伸)さんでした。
なんか、白倉さんのは話半分で読んで、そのあとでダブル井上の話を読むのがいい按配だと思う(笑)
そして敏樹氏は、このシリーズが出るたびに株が上がるな!

次作への期待

なんか敏樹氏は「次はもうない」と予言されていますが(笑)、できれば三作目も出してほしいです!
そうなると『カブト』『電王』『キバ』ですかね。『DCD』は入れるか入れないか悩みどころですなー。

…で。一番気になるのが『電王』の扱いなわけです。ファンとしては。

上でも書きましたが、特撮男子が知りたくってしかたがないのが、「なぜここにきて爆発的に女性ファンが増えたのか?」ということなのは理解いたしました。
そして、おそらくその中でも際立った人気を博した『電王』について、いまだに謎を探っているのだと。
…でもね。

一人のファンを取り上げて、それだけで検討するっつう手法は、無理があるですよ!と言いたい。届くかわかんないけど。

どうしてもしたいのなら、女性論客を三人くらい呼んでくるか、五人くらい集めて座談会させるか、だと思う。人数には根拠はないよ!
そもそも電王現象って、核がないのが特徴みたいなところあるもの。公式読本は『電王』のときに生まれたムック本だけど、その理由は、『電王』のおもしろさを探るには証言を重ねるしかないという判断からだったし、わたしはそれはとても正しいものだったと思う。つまり、コレという核がないものを、無理やり見つけ出すような無茶はしないで欲しいってこと。

なんかね、二ノ宮先生のコメントがちょっと悲しかったのよ。「どうしてこれがヒットしたんだろう?」って目線で見ちゃって、あんまりノれなかったって言う話。
『電王』は総体としておもしろいから、そんな風に最初からメスを握って分解されちゃうと、まったく良さが消されてしまうんだよ…
分析して次につなげるのは大切だけど、切り刻まないでほしいなーと一ファンとして強く願う。

『電王』はさ、面白かったんだよ、本当に単純に。
この話、長くなるから別にするね!こちら


というわけで、次も楽しみにしてますよ!