double standard

平成仮面ライダーへの思い入れを語ります。現在は更新停滞中。

仮面ライダー鎧武 第43話「バロン 究極の変身!」(前篇)

紘汰ー!!!!!


今回の密度に対応して、二つに分けました。
誰推しかで感想の力点が変わりそうですね。
わたしはもちろん、紘汰から。

前回からのあらすじ

ヨモツヘグリロックシードにより、極アームズにすら苦戦させる力を持った光実。しかしその力は、装着者の生命を確実に蝕んでいく…
放たれた必殺の刃。受け止めんと鎧武は刀をかまえ――そして、捨てた!

紘汰ー!!!!!

紘汰の狙いは、あくまでヨモツヘグリロックシード。さすが劇中で数多のRSを狩ってきただけのことはあります。
肉を切らせて骨を断つ。攻撃をあえて受けることで接近を果たし、見事、龍玄・黄泉の変身を解除させることができました。が…
同じく変身を解除した紘汰の腹には赤い大きな傷口が…

境界線の向こう側へ

だって俺たち この間まで 仲間だったじゃないか

違う!僕は…

お互い どこで間違えたのか どこが分かれ道なのか
正直俺にはよくわからない

でもな

そんなに昔の話じゃ ないと思うんだ

先週あたりからOPの映像が映画仕様から元に戻りました。
心の底からの笑顔で、チームのパーカーを着てダンスを踊る紘汰やミッチ。
そうだ、これは本当に、そんな遠い過去の風景ではないはずなんだ…

だから 引き返そう

引き返すなんて 無理だ

バカだな ミッチ

この先どれだけ長く歩くか わかってんのか?
それに比べりゃ たいしたことないって

いつの間にか紘汰は大人になっていた。大人になるということは、自分のいる時間が「いま、ここ」だけではないと悟ることだ。
だから。人を抱きしめることだってできる。

許しを与える、ということ

紘汰は「許す」って言ったけど。でも、それは、紘汰にその資格があるからとか、そういうわけでは全くないんだよね。
紘汰がなにか言う前に、光実がこの言葉を漏らしたから。

そんな理由で僕を許すっていうのか?

たぶんそこで、紘汰は光実が許しを求めていたことに気づいたんだ。

ああ許す

だからお前も許してやれよ 今日までの自分の間違いを

どうしてこれまで、あれほど光実が頑なだったか。それは、彼自身が、自分の行いを「許されないもの」と認識していたから。
光実はいつも言っていた。僕の真意は後でわかります、と。
認めてもらわなくていい。結果さえ出せれば。
でもそれは一方で、差し出された人の手をはねのけるということでもあった。
ここまで来たら、もう無理だ。それなら、さらに奥へ。そのさらに向こう側にある深い闇へ。

紘汰や舞の明るさを彼は愛した。愛すれば愛するほど、自分の行為が彼らのものとはかけ離れていくことに絶望していた。

そういう気持ちを、紘汰は理解できた。
なぜなら、紘汰自身も、自分のしでかした過ちを隠して生きる苦しさを経験していたから。
友人を殺してしまったにもかかわらず、それを周囲に黙っていなければならなかった。あのときの葛藤。
だからとっさに、「許す」と言葉にできたんだと思う。

だって、紘汰自身は一度だって、光実を断罪しようなんて思ったことないもの!

騙されていて悔しいとは思った。でもそれ以上に、紘汰はずっと光実が心配でしかたがなかった。
そう、ずっとずっと紘汰は「ミッチは苦しいはずだ」という考えを忘れなかった。絶対に苦しいはずだ、だってあのミッチなのだから!

苦しんでいたあのとき、紘汰は舞に一緒に泣いてもらえた。それがどれだけ救いになったか。
「仕方のないことだったんです」、光実は正当化して紘汰を鼓舞しようとしたけど。でも、それじゃダメなんだ。だって、それはつまり自分の気持ちを偽るということだもの。そんなことをすれば、罪悪感だけが募っていく。

けれど光実は自分を正当化してしまった。理屈上は正しくても、心は悲鳴を上げていく。だからどんどん壊れていった。

紘汰は、自分のためでもみんなのためでも、ましてや正義なんかのためじゃなく、ほかならぬ光実のために「許す」と言ったんだ。

許される、ということ

許せるかよ
許されるわけないだろ!

まだだ まだやることがある
舞さんをこの手で救う それができたら
僕にもあんたに許してもらえるだけの価値があったと思えるよ
紘汰さん

光実はようやく、暴走をストップさせることができた。
それは、紘汰が許すと言ったから、ではない。紘汰によって、「許されるという概念」が差し出されたからだ。
それまでずっと、自分で自分を断罪してきた光実の狭い世界に、他者からの光がもたらされた。

許されるには、まず、許されたいと本人が願わなければならない。
「許されない”はずだ”」「許される”わけがない”」、だから光実は願いなんて持たずにここまで来た。でもそんなのは個人の思い込みでしかない。
どんなに拒んで、否定しても、「許す」という言葉はずっとそこにそのままある。
その手を取るかとらないかは、光実の自由だ。けれど、差し出された手は決してなくらない。

紘汰の「許す」という言葉は、紘汰のものであって紘汰のものでない
もっと大きななにかに通じていく、その入口なんだろう。


自分も辛い思いをしたからこその、行為。
何も知らなかったのは、確かにそんな昔の話じゃない。でも単純な時間の長さではなく。過ごした密度の濃さによって、この物語は、主人公は、こんな遠いところまで来ることができたんだ…