double standard

平成仮面ライダーへの思い入れを語ります。現在は更新停滞中。

仮面ライダーエグゼイド 24話〜32話感想

なぜ32話?ってことですが、キリがよさそうだったので。仮面ライダークロニクル始動〜クロノス降臨までです。便宜上、第3章と呼びますが、公式にはたぶん違う。

3章に入ってますます人情話が削られ、バトルゲーム物としての側面が強くなってまいりました。個人的には事実関係の整理把握がしやすくなったんですけど、世間ではわかりにくいと言われていたようで、バランスってのは難しいですね。

相変わらず溜めてるんで、今回もざっくりとキーワードについての感想になります。

仮面ライダークロニクル

難易度高すぎてクソゲーじゃねーか!!!
と突っ込んだ矢先、むしろそのせいで一般市民が参加せざるを得なくなってしまい、なるほどとなりました。

すわバトルロイヤルか!と思いきや、あくまでこれはゲーム。すでにまとまったライダーたちは各々の立場はあるにせよ、基本的には協力プレイ路線です。
目指すのはノーコンティニューでクリアだぜ!(※そもそもコンティニューさせてもらえない)

『エグゼイド』はモチーフであるゲームをきっちり踏襲しているところ頑張るなーと思いますね。
しかし一方で、ただの場面設定でもない。
仮面ライダークロニクル」のキャッチコピーは「誰でもヒーローになれる!」ですが、つまり裏返せば「誰がヒーローとなり得るのか?」ということなんですね。
例えば『龍騎』『剣』の個人や種族のエゴによる勝ち残りゲーム…ではなく、「クロニクル」では参加者たちはむしろ「誰かを助けたい」という思いで参戦するのです。
大義名分がある。欲望だけではない。
じゃあそんな中でヒーローとは?となる。ヒーローとは、ゲームをクリアすることのできる力を持つ人…そう、気持ちだけではヒーローにはなれない…だからこそ、戦える人の肩には使命と責任が重く課せられるのですな。

従来、「ヒーローになりたい」はひとつの欲望と解されてた作品が多かったので、ひねりつつストレートな設定は新鮮でした。

てなこと言ってる一方で、じゃあヒーローってのは純粋無垢なのかというとそうでもないという展開も行ってくるんだからよく考えられてます。てことで次の項↓

バグスター

ゲームというモチーフは、むしろこの敵設定のためなんじゃないかと思えるくらいきっちり使ってきますね。

バグスターは人が生み出した存在。ここまでは、まああることです。
しかしなぜ生み出されたかというと、「人間に倒されるため」。これはそのままヒーロー物の構造になっていきます。
つまり、敵がいるからヒーローがいるわけではなく。ヒーローが存在するために敵がいる、ということ。

ヒーロー物のジレンマと申しますか、厳しいところに切り込んできたな、という感想です。
非公認戦隊でパロディとしての扱いでやっと言及してたような話だぞおい!

そこで反旗を翻すバグスターのパラド。その彼は、なんと主人公・永夢の影!
そこまでやるかー!

というわけで、ヒーローってのは、マッチポンプで繰り出される虚構の英雄なのではないのか?という、ヒーロー物が背負わなければならない一種の欺瞞について、果たしてどう落とすのか楽しみです。

初の女性仮面ライダー・ポッピー

まあこれはわたしが言及せねばならんところですな。
つうのはまあ、こんなことを書いていたからですが。女子高生仮面ライダーに意味はあるのか〜『仮面ライダーウィザード』試論 - double standard

女性ライダーってのは、ずっとスポット的な存在だったんですよね。
これまでの準仮面ライダーというべき女性ライダーたちは、ある意味で派生品というか、色替えキャラというか、彼女たち一人一人が仮面ライダーとしての属性を担うものではありませんでしたからね。
タックルさんのことはまったくわからないんで、申し訳ないのですが脇におかせていただくとして。
龍騎』のファム。『剣』のラルク。『響鬼』のあきらや朱鬼。『キバ』のイクサ。『DCD』のキバーラ。『フォーゼ』のなでしこ。『ウィザード』のメイジ。『鎧武』のマリカ…*1

どうして正式にライダーと呼ばれないのかは、彼女たちが「継続して力を行使し続ける」ことから弾かれていたから
わたしの観点ではもう一つが「特定の変身アイテム」を持たないから。

なぜ彼女らが変身できるの?という理屈付の部分を、なんとなーくというかうやむやにすることで、なんとか「女性が変身する」ことを成立させていたのがこれまででした。

で、ポッピーですが。めちゃくちゃきっちり仮面ライダーです
ポッピーはバグスターである。バグスターは仮面ライダーと同質の存在である。そして、ポッピーはバグスターであるか仮面ライダーであるのかを選ばさせられる…
むしろ永夢や飛彩ができないテーマをポッピーが担っていると言えます。

特定の変身アイテムこそ持たないのですが、仮面ライダーの本質を劇中で背負っているのは決定的です。
一方で量産型のニコはライダーと定義されていないところが線引きのキッチリさを示していますね。仕事が細かいぞ!

『鎧武』のマリカも「持続して力を行使し続ける」「特定のアイテムは持たない」のでほぼ初の女性カメンライダーに肉薄してるんですが、公式が彼女をカウントせず、ポッピーというキャラを新しく構築したのは、うやむやなまま成立させる気がなかったからでしょうね。
それだけ、決意と覚悟を持って女性ライダーを出そう!と思ったのだろうなあ。

上記のリンクでわたしは「番組と視聴者の双方が成熟することで実現する」と述べていましたが、つまりは『エグゼイド』ってそういうことなんですよね。この点からも『エグゼイド』が第二期平成ライダーの出した一つの答えと認識することができますね。


ただ個人的に一点、惜しむ部分があるとすれば…
それは、ポッピーが生身でないことですね。
いやぶっちゃけ、『エグゼイド』ってキャラクターの性格が薄いとこあって。ポッピー、女の子の姿だけど、女の子としての属性あんまり感じないのですよ…
とはいえ、もうここまできたら、この先はふつーに女性仮面ライダーが出てくることになるでしょう。だから、これは不満というか、期待です。
女性としての人生を背負いつつ、仮面ライダーになる女性キャラが出る日が楽しみです。


あとは車椅子ライダーだなー。

新壇黎斗

うぜぇ〜!
敵にとっても味方にとってもうぜぇ〜!!!
”触れることで相手のレベルを下げる”という特殊能力、めちゃくちゃ強いんですけどめちゃくちゃうっとうしいですね!素晴らしいな!

あと新ってなんだよ。いずれ真とか改とか言い出すのか。

なんて言いつつ、味方?になる流れの描き方はかなり好きですね。
まったく改心はしてないんですよね、クロト。自分の生き方自体に迷いはない。
自分が生み出したものに対する愛情に目覚めたことで、立ち位置を変えた。とても唯我独尊の黎斗らしいし、けれど、その感情はいきさつはどうあれ温かいものであるのは間違いないわけで。
主人公たちと共闘するために、主人公たちに同調する必要は本来ない。というところを抑えているのは個人的に嬉しいですね。

永夢の説得は、実際のところ黎斗には響いてないと思う。あれはむしろ、永夢自身(と視聴者)が共闘するのを納得するためにひねりだした理屈なんじゃないかな。
永夢がずっと黎斗のこと嫌いなのがいいですね。それでいいんだ。

なおわたしは超小心者プレーヤーなので、「99回の命がある!」って言われても「99回死んだらゲームオーバーだ…」ってなってしまうのでした。後ろ向きすぎるな…(回復薬を大事にしすぎて使うタイミングを逃すタイプです)

あとチマチマと

  • 飛彩はいつもどこから出てくるんだ
  • アスナ以外に看病する人がいないCR、大丈夫か
  • ニコ「なんでわたしだけコイツの気持ちを理解しなければいけないの?不公平じゃん」 まったく確かに。
  • 新社長・恋さんの回が担当に来るとはしゃぐ諸田監督好き
  • 院長!キャラ薄かったけどここにきてこんな!でもそれは目先の生き方すぎるので、立場使って手助けして下さい!(院長って肩書きもしや無力なのか…?)
  • 堀内監督は賑やかな画面作りがよいですね。バトルにスピード感があるし
  • クロノスの能力発動シークエンスがとてもかっこい。BGMをまったく使わないところが冒険的。

わたしと『エグゼイド』

さて、初めに「人情話が削られたことにより呑み込みやすくなった」と書きましたが。でもそれはそれとして、わかりにくいという意見もうなずくところは大だったりします。
というのは、登場人物の心情変化よりもバトルゲーム物としての展開の方がメインだからなんですね。そうすると、ここの感想もちょっと書きづらくなるんですよ。事実関係の推移だけ並べてもつまんないですし。で、そのバトルゲーム物としてもよく組まれてるなーとは思うんですけど、あんまりびっくりはしないし。

いやもちろん、わたしもお話にはすべからく人情が必要、という考えはないです。SFやミステリなんかだと、そこで追及されるジャンルの思考実験においては人間性など不要!むしろ邪魔!くらいの気持ちもあったりしますし(かといって、人情話があるSFやミステリを嫌うわけでもありませんよ念のため)。

仮面ライダーというテーマ追求はすごくよくやってるんじゃないかな、と思います。わたしは仮面ライダー専門家ではないのでそこまで踏み込めない案件ですが…
女性ライダーの成立とか、パラドのポジションとか、ついにここまでやれたって感じですもの。

うーん、なんだけど…

この記事も、分析して、言葉にすると、「おー!『エグゼイド』すごいなあ!大森P、高橋さん、すごいなあ!」ってなる。なるけど、楽しかった?って聞かれると、うーん。
いやまあ、新壇黎斗とか楽しかったけども。大我とニコには心がなごんだけれども。

バトルゲーム物としてよく組まれてる、けど。けども。お話としておもしろいか?って聞かれると、わたしは困る。それは、ちょくちょく書いてきたけど、印象的な台詞とか、キャラクターの描写とか、物足りないから。
役者さんたちもきっちり演じている分、はみだしはあまりないし(そしてその一方ではじけていく新壇黎斗である)。
やっぱり、物語を見てて何が楽しいって、そういう彩の部分は大事なんですよね。
あとやっぱり、何を守りたいのか……その心を、もっと描いて欲しい。「命は大切だから」ってのは、当たり前のことで。その当たり前のことを、高橋さんの言葉で聞きたいのです。前提だけでではなく。

相変わらずぐねぐねした記事で申し訳ありません。とはいえ、なんか見えてきたこともあります。すべて見終わってから、その辺は言葉にしたいと思っています。


(ところで今日初めて気づいたんですが、『エグゼイド』タグ付けてませんでしたね…なんてこった…自分にびっくりだよ)

*1:全員出せたかな?