double standard

平成仮面ライダーへの思い入れを語ります。現在は更新停滞中。

小説 仮面ライダーアギト

『ウィザード』は横回転しながらキックかますのがすごい好きです〜。しかしそれはそれとして、ときおりオーズの動きがちらつくように見えるのはわたしだけかしら…



著者:岡村直宏、井上敏樹
講談社(2013/1/30)
ISBN-10:4063148521
ISBN-13:978-4063148527


著者:岡村直宏、監修:井上敏樹ってなっていますが、これ、ほぼ敏樹氏のホンだよね?プロット渡したとかじゃなくてざっとシナリオ書いて渡したんじゃないかって気がするわたし。岡村さんの筆知らんけども。だって…

三人のアギトの物語。ふつうにノベライズです。良い意味でも悪い意味でも。
ふつうに、っていうのは、『ダブル』みたいに番外編の話でもなく『オーズ』みたいに後日談でもなく、ひとつの話を小説の形で再現するっていう意味で。
別の形態に移植するわけですから、そこにはさまざまな変更が生じます。
この小説では、アギト・ギルス・G3の三人の運命の糸が絡み合うさまに焦点がしぼられており、よってアンノウンはほとんど背景。正体も目的も問われることはありません。もちろん謎の青年も出ないし、あ、あとあかつき号事件もないので木野さんも出ません。
逆をかえせば、「アギトってどんな話なの?」とか「もう一度見たいけど50話くらいあるんだよな…」という人にちょうど良し。そういう意味で、ふつうにノベライズ。

そのかわり前面に出たのがヒロインである真魚ちゃん。彼女を核として三人の運命が交錯します。


以下たたみます。今回はちょっと辛口。

というわけで、しょっぱなから飛ばすと、これ書かれる意味あったかな?(大暴言)
いや、ノベライズっていったらふつうこういうものになるのはわかってるんですよ。原作をコンパクトに畳んだ、ね。だから、「たかだかノベライズにお前はなにを期待していたんだ」と言われると返す言葉もないのだけれども。
ほかのシリーズが本編に対してちゃんと意味を持っていたから、余計に残念なんです。
まあでも、本編もきれいに完結して、映画とTVSPでほぼ完全に補完して、じゃあほかに語ることあるのかと言ったらないんですけども。だからうすうす、こういうものになるんじゃないかとはわかっていた。わかっていたが。

そりゃいろいろ変更点や初耳情報はあるけども、これ言ってしまえば便宜上ですからね。敏樹氏自身が究極と公言した『ファイズ』とは意味が異なる。一冊の文庫本にまとめるための方便でしかない。読みながら身が入らなかったのはそのせいなんだよなあ。

もちろんひとつの物語としてはちゃんとしてる。真魚ちゃんを核に据えて、三人が交錯するのはきれいな構成。でも、ひとりのヒロインを軸に男同士のぶつかり合いって敏樹氏そのパターン好きすぎ!頼りすぎ!同時発売が『ファイズ』だから余計に!

ていうかなにより文章がなあ。ほかのが超うまくてこれが超へたっていう話じゃない。問題は小説に落としこめていない部分が多々あるってことだ。
特に雪紀さんのところな。主人公に好意を寄せる女の子がその主人公との待ち合わせに行く準備の最中に殺されて、主人公はそれを知らずに待ちぼうけって残酷にロマンチックな状況なんだからそこを盛り上げて!場面だけ箇条書きされても「それで?」ってなる。演出家の解釈が入って映像化されたら意味が出てくるんだろうけれども、それはシナリオであって小説ではない。
そもそもこの挿話自体もこのままじゃ意味がなさ過ぎる。

岡村直宏さんがどういう人でどこまで裁量があったのかはわかんない。けど、空っぽの箱を作る癖づけとか、涼の過去話とかはすげえ敏樹氏っぽい味付けだし、同時発売の『ファイズ』とテンポが一緒だからたぶん本当に書いただけって気がする。清書した、に近いんじゃなかろうか。
そら本編に噛んでもいない脚本家の人に書かせるんだから無理はあろうけれども。そんだったら本職の作家さんに頼んでそれなりに仕上げてもらえば良かったのに…予算のせいか。
ただ岡村さんで良かったのはひとつあって、っていうのはヒロインである真魚ちゃんのかわいさが出ていたから。これ敏樹氏が書いてたら絶対嫌な女になってた。断言する。

怒涛の展開の最後の章はおもしろかった。おもしろかっただけにここまでうまく持ってきて欲しかった…

ああ翔一くんともう一度会えたっていうだけが喜びだよ(←ファン)。
あ、北条さんがベジタリアンって味付けは良かった。
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