double standard

平成仮面ライダーへの思い入れを語ります。現在は更新停滞中。

小説 仮面ライダーフォーゼ〜天・高・卒・業〜

小説版キター!!!ということで。
たいそう遅くなってすみません。


著者: 塚田 英明
出版社: 講談社 (2014/3/1)
ISBN-10: 4063148696
ISBN-13: 978-4063148695

表紙は天高コートのオレンジ!そっちだったかー。宇宙の青かと思ってました。
あと、今回、帯がフォーゼ/如月弦太朗役の福士蒼汰さんの写真付コメントで、おおいいぞ、旬の使い方が適切だ!と喜んでしまいました。そうそう、こういうアドバンテージは活かしていこうぜ!

お話は副題の通り。え?卒業式は最終話でやったじゃん…と思っていたら弦太朗たちの代の卒業式でした。ああ、そりゃそうか!
位置付けとしては後日談。また、映画に至る前日談でもあります。とはいえ、『フォーゼ』は天ノ川高校という舞台と直結したお話ですから、主人公がそこから卒業するこのお話は、もしかしたら本当の意味での最終回かもしれませんね。
天高の卒業式と言えばプロムパーティ。その開催をめぐって再び姿を表わすゾディアーツ。一方で、主人公たる弦太朗はいつもの一直線の生き様はどこへやら、進路が決められず、自分でも戸惑っている。賢吾やユウキも自分たちにとっての重大な局面に捉われるあまり、関係性に行き違いが……
弦太朗たちはいろんな意味での「卒業式」を迎えられるのか!?どうなる、仮面ライダー部!


一応ネタバレってことで畳んでおきます!
はっきり最初に言っちゃいますと、本編の『フォーゼ』にはわたし、突っ込むところの方が多い立場です。
そんなんでしたので、この小説版も正直、どうなるかなあと手に取ったのですが…

あ、おもしろいじゃん!

すみません、上から目線で。

まあそんな立場からの意見はともかく、ファンはストレートに大満足ではないでしょうか、これ。これまで登場した主だったキャラはほとんど登場するし、もちろん仮面ライダー部のみんなは大活躍!なつかしのアイツやコイツも活躍するよ!最後の船上でのまさかの友情のシルシは、ぐっとくる人は多いのではないでしょうか。
さらには、新ゾディアーツに謎の新仮面ライダー!正体を探しての天高を飛び出した調査など、見所も盛りだくさん。シリーズの中でも枚数に厚みがありますが、それにふさわしいボリュームとなっております。

いやもうね。絶対、塚田Pはうまく書くだろうと思ってたけどね。『アギト』公式HPのイラスト仕事とか見ると、学生時代はいろいろ書いてたんだろうなあと思うもの。作る作品もネタに凝るしね。むしろなんでこの人、プロデューサーの道を選んだんだろう…
『キバ』の古怒田さんとはまた違った意味で、二次創作やってたと思わせるこの文章。
芸達者な人だなあ。


さて、真面目な話。
おお今回はおもしろい。ちゃんとおもしろい!と思ったその理由は、理事長も校長もいなかったからかもしれない。プロムという、学生生活のいろいろなものが噴出する瞬間をめぐる、学生たちの学生たちによる学生のための物語。「高校生仮面ライダー」「青春スイッチ」のお話になっていたからではないのか、と。
それから、これがついに弦太朗の物語だからかもしれない。生まれて初めて迷うことで、ついに弦太朗も青春の伝道者ではなく葛藤の当事者になる。当事者の物語がおもしろいのは当然のことです。

あと、ちゃんと今回のゾディアーツになってしまった生徒たち(そう、生徒たち)の、ゾディアーツになってしまったその心が浄化された、からかなあ。うやむやにもほどがあったからね、本編。
宇宙空間から地球を見て、自分のちっぽけさを知る。宇宙と青春のテーマが直結して、ここは好きです。
浄化と言えば、そういえばM-BUSの連中、放置で終わってたしな、本編。ここで園田先生がやっとスポットもらえて、それが弦太朗の迷いとつながっていくのは良かった。さらに言えばこういう物語を提示してもらえれば、我望理事長の野心の非道さが伝わるってもんです。

うん、まあ、本編で取り上げきれなかった要素をここで解消しよう!というもくろみでは、正直ないと思うんだけど。たぶん、小説として『フォーゼ』を書くならここまでやることができた、ってことなんじゃないかしらん。
文章を書くってことは、整理するってことですねえ。

相変わらずの恋話満載なのは、まあ青春物語だしね。
なんぞと言いつつ、賢吾とユウキのカップルは好きなのでかわいかった(笑)。しかし賢吾のスネ方は女子学生か!
しかし結局、弦ちゃんがちゃんと「友情」してるのは賢吾相手だけなのではという疑惑が。
ところで弦ちゃん、賢吾の気持ち気づいてたんだ。マジで!?(むしろ賢吾だだもれ説)


まあ、本編で感じた「うーん」なところは正直、やっぱりここでもあるんだけど、それはそれとしてお話がしっかりしていたので楽しめました。
(その辺掘り下げると話が広がりすぎるんでここでは触れることじゃあないので。いやほら、相変わらず生徒が「皆殺しだ」とかまで言ってて力を行使してるってのに扱い軽すぎるだろ、ってところとか、仮面ライダー部の部としての存在理由は一体なんなんだよ、とか。)
青春のお話でしたねえ。青春のモヤモヤをヒーローが吹き飛ばすお話。

…ただねえ、「青春は光と影があればこそ」っていうのは、まあそうなんだけどさあ。それを全部消化しきった大人に言われるならいいんだけど、同じ学生に言われても反発心の方が強くなるよね。言わせるキャラを間違えてるよね。
それから、弦ちゃんに自分で「快男児」って言わせるのも間違ってるからね。自分で自分を良いように定義しちゃったら、そこには濁りりが生まれるからね。そうありたいと思って名乗るんならまだしも。

あと、上であんなふうに言ったけど、個人的には流星と鬼島で友情のシルシはせんで良かったんじゃないかと思うですよ。お互いを認め合うまではわかるけど、結局カニのアイツ、愉快犯であることは変わらないもん。一線は引いておいた方がいいと思うぜ。