double standard

平成仮面ライダーへの思い入れを語ります。現在は更新停滞中。

劇場版仮面ライダーW と Vシネマ仮面ライダーW

以前、「『W』の本編は消化不良感があるんだよなあ」と書きました。
わたしは『W』は「正義の問題を美学という発想で割り切る」という点を評価しているのですが、中盤以降あんまり突き詰められなかったなあ、と思っておりまして。あとやっぱり正義が場所で限定されすぎているなあ、というのも。
ところがコメントで複数「それは映画版とVシネを見た方がいいよ!」と教えていただき、今夏、ついに『W』関連をコンプいたしました。

んで感想は…
見て良かったです!ゴメンな『W』、お互い不幸なままだったな!

劇場版仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ

謎の白い仮面ライダーが風都タワーを襲う。ガイアメモリの進化系であるT2ガイアメモリの力により、既存の仮面ライダーの力は封じられた!果たして探偵は街の平和を守れるのか?

というざっくりしたあらすじ紹介ですが、構成は見事。白い仮面ライダー=エターナルがなぜ風都を狙うのか?からの、フィリップのアイデンティティ問題とのつながり、そしてこの作品における仮面ライダーとはなにか、まで、隙なくつながっている。
すげーきっちりしていて、感動するとともになぜ本編では…いやいや。しかし、本当に『W』の単品仕事の仕立ては良いですなー。『ビギンズナイト』も良かったもんなあ(『CORE』はスカル賛歌になりすぎているので減点。Vシネだったら別にいいんだけど)。

このブログ的にこの映画のポイントはここですね。これまでずっとご町内のヒーローだった仮面ライダーダブルが、ここにきてついに開かれ(かかっ)たヒーローになっているところ。

そして、フィリップが、翔太郎にならって優しさで人を救う、というところが『W』本来のテーマが出ててわたし的に高評価です。正義とは美学、そしてこの作品における美学はハーフボイルドであるのだから。
忘れてたわけじゃないんだねスタッフ…!…だがそれなら返す返すもなぜ本編でそれがっ…!


さて、しかし、上で結局留保をつけたのは、見方によっては防衛戦と言えるからです。風都の話だなあ、と。
うーん、風都って、結局どこやねん、って話じゃないですか。作りこみがうまくいきすぎて虚構感が強くて…天川学園は日本のどこかにあるだろうと思えるし、視聴者と地続き感があるからそこまで気にならないんですけど(気になるのは別の限定さなのです)。
現実世界の写し鏡という色合いは薄い印象を受けるんですよね。唱えている正義も、普遍かというと、地域限定色が強いし。
なんかたしかどこかで、「仮面ライダーダブルはどこへでも駆けつける」みたいな話もあったとあったとは思うのですが。


ところで、なぜか劇場公開版のDVDしかなかったのでディレクターズカット版で見れてないんですが、理解に差は出ませんよね?
なお、『キバ 魔界城の王』だけはなぜかどっちの版も置いてあった。それは間違いなく正しいのだが。

すっかり忘れてたんで映司くんが出てきたのに飛び上がった。まだ見たことない映司くんがいるのは嬉しいな!

仮面ライダーW RETURNS 仮面ライダーエターナル

悪の仮面ライダーって、やっぱり必要なんじゃないかなって思った。

いやーただよう東映Vシネ臭!本来の意味ね。見たことはないんだけど、なんか知ってるよね90年代東映Vシネマ
坂本監督×塚田P×三条陸のとりあわせは、正直、「子ども向け」「特撮」「ヒーローもの」というより、このバイオレンスアクションテイストが一番あっているような気がする。なんというか、悪人の命の安さ的に。
イカさんが吊られたあたりでもう笑ったんだけど、坂本F監督はハリウッド的云々よりもこっちのほうが活き活きしてるネ!

いやでもちゃんとテーマはしっかりしているよ!良かったよ!
正義と悪、なにがその道を分けるのか?ってやつね。

感心したのが、克己を結局ホントはイイヤツ、という片付け方にしなかったこと。もともとちゃんと(?)マイナスにいた、っていうのを作り手が自覚している。
プラスにいたのがマイナスに転じたのなら、「ホントはイイヤツ」になっちゃう。そしたら、まあ、なんというか安いじゃないですか。
克己はそもそもマイナスに片足がずっぷりはまっていて、でも、もしかしたら這い上がれたかもしれない。この「もしかしたら」がミソで、だから、同じ力を持っているのにどうして正義と悪に分かれるのか、なにが大事なのか、というテーマが浮き上がる。
最後に翔太郎とフィリップが花束を贈ることで、きれいにまとまってGOOD。

仮面ライダーは正義の味方だ!悪の仮面ライダーなんてややこしいもの出すな!という意見もそうだようなあとは思うのですが。
でも、『仮面ライダー』ひいては石ノ森章太郎の魅力って、力は力でありそれをどっちに用いるかで正義と悪が分かれてしまう…だからこそ正義のかっこよさがある、という話なんだと思うんですよね。*1
『W』は平成の中でも勧善懲悪的な雰囲気が最も強い中の一つですが、その『W』でこういう話をこういうレベルで見せて貰えて、わたしはなんだか感心したよ。


ところで噂にきいていた須藤元気がすごすぎる。全部持ってったよ!でも彼は結局彼女なの?なんかどの位置の同性愛者なのかよくわからん。
姉が一時期SOPHIAのファンクラブ会員だったこともある身としては、松岡さんの雄姿が感慨深い。しかし「克己」という名前の意味はこのVシネマでこそ重いなー。

仮面ライダーW RETURNS 仮面ライダーアクセル

異性の友だちの新婚生活をのぞき見ているようで気まずさがハンパなかった。

普通に娯楽で行くかと思いきや、こちらも正義と悪どちらの道を選ぶのかというテーマがしっかりしていて感動した。なんで『W』のスタッフは単品仕事になると職人気質を発揮するんだ!
それにしても田中実さん!田中実さんじゃないか!!!あああ、そうか、このころはまだ…
刑事貴族』の夕方再放送で育ってるんですよ、わたし。

手錠でつながれた美女、地下組織への潜入捜査、日本中への指名手配とおいしいことは全部つっこまれている。塚田Pのやりたい潜入捜査官ネタが全部入っとる…!楽しそうだネ!
亜樹子ちゃんは傍にいて元気づけて欲しい女の子で、美女はうるおいとしてゲストにおいてフェロモンだけ味わう、という男の醍醐味。亜樹子ちゃんがなんで伴侶なのか了解した。
『エターナル』がバイオレンスアクションなら『アクセル』はカンフー映画であった。いやでもあそこのアクションシーンわたし大好き。木之本さんの肉体すげー!
そしてジャッキー・チェン的コミカルカンフーはなだぎさん。いやー、芸達者で感動したね!わたしこのVシネ好きよ(笑)。


というわけで映画もVシネマも見てみたら大満足でした。Vシネマの方が特に活き活きしてるなーとは思ったが、でも番外編は本編があってこその盛り上がりですからね。ちゃんとダブルが活躍してそこも嬉しかった。
不満点が全部解消、というわけではないけれど、ちょっとスッキリできた。教えていただいて良かったです!

*1:横山光輝鉄人28号』は「良いも悪いもリモコン次第」ですし、手塚治虫鉄腕アトム』も勧善懲悪かというと複雑な話ですし、特にあの世代の漫画はそんなに生やさしいもんではないと思う