double standard

平成仮面ライダーへの思い入れを語ります。現在は更新停滞中。

『仮面ライダー鎧武』を見終わって(総合的感想)

というわけで総括です。
久しぶりの多人数ライダー、みなさまはいかがでしたか?
わたしは、なんだかんだ言って一年楽しんじゃったナーって感じです。いや、絶対信じてもらえないのはわかってるんですが、わたしは手放しで誉めてませんよ『鎧武』。
でも、子ども番組として伝えたいメッセージや、平成ライダーをやるからには追及すべきテーマなんかを、ちゃんと一年47話貫いてやり抜いたことは評価したい。久しぶりに見ているこっちも傷だらけになりました。

「物語」を一年かけて見た、と感じます。
でもたぶん、そこがまさに賛否の大きな分かれ目のような気もします。

虚淵玄さん、脚本家としてはあんまし上手くないよね。

『鎧武』がなぜあなたの心に響かないのか

センセーショナルな見出しをつけてみました。みなさん知っての通り、わたしは好きですけどね『鎧武』。

さて、なにゆえに『鎧武』には批判が多いのか?いや、見ると辛くなるからわざわざ探しに行ってはいませんけど。予想はつくよ、さすがにね。
展開がドギツイから?キャラの行動の端々がDQNだから?物語のステージが毎回変わって現在位置がつかみにくいから?
いやでも、そんなの毎年のことですし。
わたしが思うに、これは脚本の問題です。それは構成とか設定とかそんなところの話じゃない。

小説で言うと文章が。漫画で言うとコマ割りが。
脚本の組み方が素人目にも不器用なところが目立つ。
脚本を組み立てる道具に不備が多いのだ、とわたしは判断しています。

どういうことなのか?

セリフの問題

まず、セリフが多い。単純に数が多いんじゃなくて、流れの上で要らないセリフが多い。脚本のセリフはなるべく減らすがセオリーです。むろん世の中には多いのもありますが、セオリーを知ったうえでやっているものには理由がありますから、そういうのは見ていてストレスにならない。でも、『鎧武』はそうじゃないから視聴者が注意力を振り回されてイライラする
次に、セリフが多い上に説明調。さらにイライラしますね。
そして最後に、言い回しが文語的。目で見て映える言葉遣いなんですよ。耳でぱっと捉えられないので、ここまでくるとムカついてくる人もいるかもしれません。

人物配置の問題

はっきりと『鎧武』で特徴的なのが、まず「物語ありき」であるところ。ちなみにわたしはほかに虚淵作品を見ていないので比較や断定はしません。
これはどういうことかというと、つまり、キャラクターの動きがあらかじめ決められており、制限があるということです。
むろん、動かしていくうちに人気が出たりして活躍が増えたのもいますが、最初の構想は絶対に揺るがないよう守られていた。
そうなると、視聴者としては受動的な立場に押し込められて、テンションが下がってきます。
さらに上記したようにセリフがゴテゴテしていますから、なんか面倒くさくすらなってきます。

感覚の問題

見ていてつくづく感じたのは、脚本担当の虚淵さんは、小説的な感性が土台の人なんだな、ということです。
脚本というものの一番大きな特徴は、画で見せることを念頭に置く、ということです。まず、画にインパクトが生まれるような場面・セリフを考え出さなければならない。そして、画で視聴者が物語を理解するように誘導しなければならない。
虚淵さん、展開の結節点が抽象的なんですよ。画になってない。
だから、読み込もうと思ってる視聴者以外には、なんでこうなったか感覚で理解できない。これは映像の文脈を読むとかいう問題とは別です。だって、文脈となる映像が足りてないんだから。


というような問題点のゆえに、客が逃げまくったのではないか、とわたしは思っています。
これは完全にあてずっぽうですが、虚淵さんは独学でも「脚本の勉強」はしてないんじゃないかと思う。たぶん、実際に書いてみて、とにかく書いてみて、ここまで来た人なんじゃないかしら。「脚本の書き方」みたいな本は読んでないと思うぞ。

で、まあ、見ていてそこはすごい気にはなったんですが。ですが、しかし。
「物語」を生み出す力は強い
さすが天下をとっただけのことはあります。
ここんとこが虚淵さんの魅力なんでしょうね。


あ、あと庇っておくと、キャラの土台はしっかり作ってあったと思うよ。お人形さんじゃない。
そこがちゃんとあったから、役者さんがあれだけ広げられたんだと思うからね。

なぜわたしは『鎧武』が好きか

さて思いっきり批判を繰り広げましたが、みなさまご存知の通りわたしは『鎧武』が好きだ。
なんでか?
ヒーローの話をしていたからさ!
そしてヒーローになろうとする葛葉紘汰が良いやつだったからさ!

あと、ステージが変わる、というのが、わかってくるとすごくワクワクした。次はどうなるんだろう?この決意が次にどんな風に変化を受けるのだろう?そこでわたしは紘汰と一緒に泣いて、笑って、怒って、傷ついて、喜んで、そして最後の景色までつれていってもらった。それがとても楽しかったのです。

紘汰がキライな人はそりゃいると思うよ。でも、紘汰がヒーローでなかったと言われると、わたしはそれは首を横に振るよ。

さてそんな紘汰や、それだけじゃないミッチや戒斗や貴虎やそのほか…彼らが魅力的だったのは、では虚淵さんの力かというと、正直、これは役者さんのおかげだとわたしは思っている。
野岳さんが紘汰を演じなかったら、わたしも『鎧武』を楽しめなかったかもしれない。

役者が乗せる力

なんだろう。今回の『仮面ライダー』は、特に役者さんが印象に残りました。
それは、演技力が高かった、というような話ではないのです。

むろん、これまでの作品でも、役者さんが担った部分は軽いものではありませんでした。
けど、なんかわたしは特に『鎧武』の役者さんたちに目を奪われるのです。
たぶん、脚本が明らかに足りなくて、その足りない部分をはみ出す勢いで埋めていってくれたからだと思います。一応歴代の脚本、ちゃんとしてるからね、それなりに。

惜しむらくは、そうやって役者が上乗せてくれたものを脚本がフィードバックしきらなかったところですが。虚淵さん、本筋からガンとして横に動かないんだもんなー。それは物語を語りきろうとするうえで大切な姿勢ではありますが。
城之内やザックがこの作品世界を大きく広げてくれたとわたしは思うよ。ザックはさらにいえば、戒斗を視聴者に親しませるうえでも役に立ったし。
あと、コラボ回が多くて不評でしたが、タイミングさえ除けばあれも良い拡張になったと思う。キカイダー回で紘汰のお姉ちゃんのキャラが立ったとわたしは思っているよ。

ミッチの痛々しさや、貴虎の弱さ、凌馬のウザさなんかは、役者さんあってのおもしろさだった。
戒斗は小林さんには難度が高かったと思うけど、終盤はすさまじいものがありました。
舞にあれだけの説得力が生まれたのは、志田さんがちゃんとやりきったからだよ。
あと、店長役が弓削さんで良かった。さすがライダーに慣れているだけあって、「よくはわからないけど意味を強める」という仕事を理解してこなしていた。
メタルさんは言うことなし。
ほかにもいっぱい。だからわたしは、中の人としてではなく、それぞれを単体の役者さんとしてこれからも認識していくと思う。
あー、あと映画のラピス良かったなー!

そういえば、なんか今回は特に各監督の特色がでていたような気もする。

アクション、アクション!

『鎧武』のアクション好きだったー。序盤は、制作者の手探りが見えてたけど、ゲネシス組が出てきてからノってきたね。つまり、弓が出てきてからと、敵対が明確になってからだ。
テンポがすごく速かったのが殺伐として『鎧武』の世界観を出していて好きだった。実を言えば従来の見栄を切るような一動作をしっかりやっていくのはあんまり好きではないので。いやでも子供にはそっちの方がいいんだろうから、そこはわたしのわがままで。

鎧武が紘汰っぽくないことが多かったのが残念だけど。たっくんの手首スナップみたいな癖を作れば良かったね。

ダンス要素について一言

「なんでダンス?」「必要性がわからない」などと散々言われていましたが。
なぜかわたしは、これに関しては最初からすんなりと受け入れられたんですよ。
いやだって、不良までいかないけど学校そんな好きじゃない若者、よくストリートでダンスしてるじゃないですか。

んで、たぶんここだと思うんですよ。
ダンスを踊る文化と、仮面ライダーを好んで見るようなオタクの文化は交わりにくい(笑)

わたしは、ダンスを踊ることで自分の世界を守ろうとするような若者が、危険なゲームで縄張り争いをする、という心理に妙に納得してしまうのだ。
でもまあ、説明は決定的に足りてなかったから、ブーイングがあるのはもっともだけどね。
でもダンス要素、あって良かったと思うよ。チームの結束とか、居場所とか、そういうの、あそこにあったもん。舞の強さはダンスと直結していたし。

個人的には、音楽面でもっとダンス要素をバックアップしてあげれば良かったのにと思うよ。


『鎧武』が見せようとしたもの

ヒーロー番組として『鎧武』が見せようとしたものは何だったのか。
伝わった・伝わらない、好き・嫌いを越えて、メッセージは確かにあそこにはあった
そこは評価してあげたいと思う。

「過程が大事なんだよ」という話だと思う。

紘汰が序盤で批判を浴びた大きな理由は、「目的がない」「現実を見ていない」「子どもすぎる」でしたが。
それって、悪いことなのか?
知らなかったりわからないんだったら、学んでいけばいい。むしろ、学んでいける、そういう方が希望があるとわたしは思う。
迷って傷つく姿そのものが希望になる。そういう話だったと思う。

過程をないがしろにしたミッチは、ボロボロになってしまったしね。でも、そんな風になってしまった人間でも立ち直れるんだよと示してあげるところまでやってくれて嬉しかった。


これに関してと、あと平成ライダーとしてなにをやったかについては、ほかに切り口を作ってまた別に記事を書く予定です。まだやるよ!

最後に

なんかまだ言い足りないような気がするけどこのへんで。
では最後に、これを言っておこう。

ありがとう仮面ライダー鎧武!冬の映画が楽しみだ!(笑)